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翡8-富本銭

■東京、都心の雑居ビル一階にあるコインショップ「大優コイン」。午後2時頃。5坪ほどの店内にはショーケースが入り口から見て逆L字形に並んでいる。ショーケースの中には透明なコインブックに納められた古銭が陳列されている。コインショップと陳列品の様子については、ネット資料1.〜3.の写真資料を御参考ください。店主(43)は筋肉質で茶髪、口ひげを整えて生やしているサーファー風の男。ショーケースの内側の椅子に座りながら、古銭の入札誌(ネット資料4.)を見ている。店に客はいない。その代わり、二人の老人が店内に持ち込んだ縁台に座って向きあっている。二人の老人は、南利一(71)と佐々寛治(74)。南は紬の着流しに、雪駄、羽織姿で細身の男。佐々は仕立てのいいスーツ、首元にマフラーを巻いた丸顔で太めの男。二人が縁台の両端に腰掛けて見ているのは将棋盤。

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