見出し画像

不語怪神(ふごかいしん)第1巻-ウロボロスの庶子Ⅱ 私がかつて見た髭の長い黒衣の大僧正について

 彼はちょうど、北極星の下にある暗い空間に浮かんでいて、胸の前で組んでいた指をゆっくり解き始めているところだった。指解きの運動の一つ一つに、私の庭に伸び出した夜咲花(よるさくはな)が花弁の結びを緩めて緩めきり、夜気に淡いまろい色を灯すだけの時間がかかっていた。彼は、指を開くと帽子を取って、開いた方の手で髪を撫であげる。帽子をまた乗せて、顎髭をひとしごきした後で両目を開いていった。

ここから先は

1,529字 / 1画像

¥ 300

こんにちは。管理人のアムルタートです。「人丸先生の執筆活動を応援したい!」「アムルタートさんのコーヒー代の足しに!」御支援、大歓迎です。詳細はTwitterに記載しておりますが、安全安心なプラットフォームを求めて放浪しております。どうぞ、宜しくお願い申し上げます。