電中日記 アキコ7
玄関を空けると自転車にまたがったままのアキコがいた。
竹谷と先に立ち話していた。
「えーとタツル君?、おまたせー」
アキコの声は少し低くて元気な声だ。夜中なので少し抑えめの音量とはいえ、とてもはっきりと聞こえた。
「おう、よく名前覚えてたね」
「うん、ほんとはさっきタケちゃんに確認したけどね」
3人で小さく笑った。
いつもの「飲み」は近所の公園で行われるらしく、これから段取りを決めるところだ。美人のミカは帰ってしまったけどもう1人別に女の子が来るということだった。
「それでどうする?俺がサッちゃん迎えに行こうか?」
と竹谷が提案した。
「うん、じゃあお願いしていい?私はタツル君と買い出しに行ってくるから」
「はいよ、じゃあ12時過ぎにタコ公園集合ね」
といって竹谷は自転車に乗って住宅街に消えていった。
「タツル君、大丈夫?歩けるの?」
「うん、全然平気だよ。毎日ずっと松葉杖ついてるし、それに俺ケンケンめっちゃ速いから」
「何それ」とアキコが笑った。
「まあいいや、行こっか」
「どれくらい距離あんの?」
「うーんとチャリだと10分くらいかな、急げば5分?くらい」
「じゃあ松葉杖で30分だな」
「ははは、まあそうだね、ゆっくり行こ」
地図も土地勘も無い土地で女の子にナビゲートしてもらうのは少し悔しかったし、自分は怪我人という情けない状況で、僕は精一杯強がることにした。
アキコは松葉杖で歩くスピードに合わせてゆっくりと自転車を押しながら横を歩いた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?