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【そして風になる】 平成九(一九九七)年。細川雄太郎は地域文化功労者表彰を受けた。これまでの取り組みが評価された形だ。 長野で倒れてより細川は、病がちになり、長年住んだ日野の実家を離れ、病院で過ごす時間が長くなった。 娘や、息子の嫁がたまに細川を実家に連れてくると、必ず「ここで息を引き取りたいものだがなぁ」とひとりごちた。 この翌年、二月二一日に細川は急性循環器不全でこの世を去った。享年八四。 稀代の童謡作家として名を成すものの、復員後は地元にとどまり、後進