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春が感じられるようになったその晩も、井戸端にいた。鍜治場でもある鉄砲の工場は、常時火が…
又兵衛の一人語りの後、刹那の沈黙を経て一貫斎が言葉を絞り出す。 「そういえば、神社など…
秋の初めに始まった鏡の鋳造は、湖に白鳥が訪れ、伊吹山の頂が白くなる季節になっても、一向…
夏の盛りが過ぎるころ、気砲の威力を強化することと、弾を一〇発まで連射することには成功し…
食事が終わり、囲炉裏の周りには私と藤兵衛二人になった。 「江戸では、得ることが多かった…
この傷が原因で藤内は床に臥せるようになり、三年後の寛政一〇(一七九九)年五月に亡くなっ…
こうして、羆(ひぐま)用の鉄砲づくりが始まった。 翌日の晩、その日の作業が終わったのちに藤兵衛が私を呼んだ。懐から紙を出す。 「こうした細工をカラクリの上部に施せないだろうか」 それは、雨覆いのさらにその上に真鍮製の覆いを作るというものだった。簡単に云うと火縄銃は、銃身に発射用の火薬を詰め、その後に弾を込める。そして、着火用の火薬を火皿に用意し、火が着いた縄で着火し、その火薬が発車用の火薬に火を着けるという仕組みだ。紙に書かれていた覆いの形は、何度も書き直した跡が