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人類学者・磯野真穂 オンライン授業「他者と関わる」第三回講義

今回は組織を考える回。
組織の人間関係はそんなに嫌じゃない。
そもそも仲良くならなくていいと思ってるし、仕事が円滑にできればそれでいい。
たまたま気の合う人がいて仲良くなれたらラッキーで、仕事の人間関係には期待してないから楽ちんだ。
でも、それはわたしのプライベートな人間関係観であって、仕事を進める上での組織を考えると見解は全然違ってくる。

参加者とのディスカッションでも一番出ていたのが「組織の政治がよくわからん」という話。
組織にはいろんな人がいる。
組織理念に基づいて合理的に結果を出したい人、人間関係を重視して仕事を進めるプロセスの中で組織を育てたいと思う人、そんなん関係なしにとりあえず出世したい人、どうでもいいけどお給料だけ欲しい人。
それぞれのやりたいことによって、仕事のやり方もちょっとずつ違っていて、それらをまとめて一つの成果を出すのは思った以上に難しい。

それをまとめる力の一つである「政治」は金と権力と欲望が絡まり合って、これまたさらに難しい。
政治って、牛耳っている中心にいる人以外は、どんな力学によって動いてるのかよくわかんないのに、確実にこちらに影響を与えてくるし、巻き込まれるのが不思議だ。

そんな疑問を持ちながら始まった今回の講義では、中根千枝さんの「タテ社会の人間関係」をテキストに日本の組織を考えました。

中根さんの集団構成の定義は「社会集団の構成の要因をきわめて抽象的にとらえると、二つの異なる原理ー資格と場ーが設定できる。すなわち、集団構成の第一条件が、それを構成する個人の「資格」の共通性にあるものと、「場」の共有によるものである。」というもの。

資格の共通性による集団は、同じ資格を持つ人の集まりなどを指し、ヨーロッパやインドなどの階級社会でも見られる。

逆に、日本の会社を想像してみると、デザイナー、営業、事務などさまざまな資格を持つ人が集まって一つの会社という場を共有している。
つまり、日本は圧倒的に場の共有によって集団を構成している社会だと言える。

これは個人と個人のつながりよりも、個人と場のつながりが強いということだから、連帯などの水平展開が起こりづらく、場への参入の順番(先輩・後輩など)が重要視されるタテ社会であるということ。
場における積み上げが幅を利かせる代わりに、場を変えてしまうとそれまで積み上げてきたものがなくなり、一からのスタートになってしまう可能性もある。

自分と会社の関係を考えても、今の会社で働いてきた分の働きはしていても、転職活動でPRできる強みがあるかというと難しい。だから、多少イヤなことがあったとしても飲み込んで働き続けている。もし、資格があって、そのつながりで働いてるんだったら、ちょっとイヤだとすぐ転職しちゃうかもしれない。
良い悪いではないけど、そういう違いはあるのかもなぁと思った。

こう考えると「社内政治がよくわからん勢」は個人としての自分が強いというか、場とのつながりよりも個人が立ってるのではと思う。
社内政治をしてる人たちは「場の文化」を弁えて、場に強くコミットしている。ときに結果を出すことより、「場の存続」が優先されることがあるから、よくわかんないんじゃないのかな。

この回を通じて、わたしの関わりたい他者は、少なくとも会社の人間ではないんだなということがよくわかった。
それは結構発見だったのでよかったな。

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