見出し画像

喘げる人

静かな夜です。
金曜日から土曜日に変わった午前2時ちょうど。

東京の上野からやや外側、「恐れ入谷の鬼子母神」でお馴染みの、入谷のゲストハウスから、お送りします。

まずは、これを読んでくれている人に、うんちくを共有したい。この記事で唯一、価値のある場所がここかも知れない。

この土地名ダジャレのシリーズとして、恐れ入りや…の対になるのが「その手は桑名の焼きハマグリ」だ。というのがそれである。

「そもさん」に対する「せっぱ」それが、
「恐れ入りや…」に対する「その手は桑名…」である。

意味はそのまま、恐れ入ります、と、その手は食わない、です。
ただ、日常で使ってる人を見かけたことはないけれど。

さて、お世話に成増。
一日一恥、まさまさのターンです。

禁じられた遊び

僕の今までの「一日一恥」は、その日起こったことの情景描写から入りーの、まつわるエピソードトークで一杯食わせーの、現実に引き戻して弱めのオチ。というパターンが散見される。

誰のオチが弱いって。あれは最後を決めすぎひん美学の現れだ!内村航平の金メダルの着地だ。いいや、単なる筆力の不足だ!なんじゃかんじゃ。

要は、そんな風に「導入、本編、着地」の3段構えになっている気がする。大概において、この「3」というのは座りが良い。とてもバランスが良い。

正直なところ「起・承・転・結」は僕には多い。「冠婚葬祭」も一瞬、何が何やらわからない。冠て何、と。ジャンケンも、グーチョキパーに、ダイナマイトを足すと、ルールが途端に見えなくなる。

冠は、元服(成人式)のことだそうですよ、と

他にもある。サッカーのフォーメーションも、4-4-2とか3-5-2とかはしっくりくるが、4-2-3-1とか、4-1-4-1とか言われると、ん?ああ、うん。なるほど、と。「ピンと来る」まで、ちょっとした間が発生する。

合コンも3ー3が一番いい。会話のリズムとでも言おうか「聞く、喋る、休む」のバランスが丁度良くなる感じがするから。まぁ呼ばれたら何でも良いんやけど。

お気づきだろうか。

この合コンのくだりの小節にも、導入、本編、着地をやっていることに。これは一体何なのか。俳句も5-7-5。全てが3になってしまう。ほんと使い勝手のよいパターンなのだろう。

というわけで、今回はこの「導入、本編、着地」のパターンは無しで行きましょう。

喘ぎ人

僕は人が「喘ぐ」のが好きだ。そして、自分も喘げる人でありたいと思っている。が、まず誤解を解きたい。

恐らく「データサイエンティストが、西海岸で今、最もセクシーな仕事だ」で言うところの「セクシー」のように、そもそもの意味から拡張して使っているので、簡単に、ここでの「喘ぐ」を説明したい。

それは「自分のキャパを越えた状況にもがく様を、相手にもわかるように、いい感じで表現すること」である。この「いい感じ」が重要で、その現状に対して、自分は間違ってない!と強弁するわけでもなく、自分が全部悪いのだ!と卑屈になるわけでもない。その間の「いい塩梅」である。

恋愛でも、仕事でも良い。何でも良い。

いい「喘ぎ」を聞きたい。その状況のこじれっぷりを聞いて、自分やったらどうするか考えてみて、でもやっぱり当事者以上の答えが出ることもなく、ああ「これはあかんなー」と言って、ハイボールを飲みたい。キャベツ(大)をお代わりしたい。

「そういう遊び」である。

これは、問題解決を目指した会話ではない。言わば「喘ぎリサイタル」の鑑賞会である。どんな言い回しで、状況の整理で、その難しくなってる箇所を組みほぐしつつ「聞かせるか」が喘ぎ人の腕の見せどころになる。

話の前提となる、これまでの経緯などの状況整理が進む間は、質問等も交えて理解を深める。ここは丁寧に進めたい。徐々にムードが高まってゆく。想像から逸れて話が大きく展開する時には、手も叩いて「それはあかんどー」など言いつつ、「あ、ハイボールお代わり下さい」などしながら進める。

喘ぎ人にはそれぞれ芸風がある。この人の固有性ゆえに、この人だからこそ難しい、という部分がある。弱みとも言えるだろうが、この際「くびれ」と言ってもいい。そこが真打ちの登場である。もし過去に馴染みがあるなら、「よっ!待ってました!」と合いの手を入れてもいいと思う。

真打ちが登場してからのサビパートはもう、打たれるだけである。邪魔をせず、存分に酔いしれる。そして、ぐいっと、グラスを傾けるのだ。
ああ、酒がうまい、と。

「そういう遊び」である。

僕には何人か、そういう喘ぎを聞かせてくれる友人がいる。その「弱さ」の顔をした芸にもてなされながら、軽く酔いつつ思うのだ。

ええやっちゃな、と。

今日はいい喘ぎを聞いた。とてもいいくびれであった。

(以上)

よくぞここに辿り着き、最後までお読み下さいました。 またどこかでお目にかかれますように。