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ILMS

という、秘密の会に所属している。

会といっても、もとはお花見や蟹の季節だったり、仲間のうち海外在住の誰かが一時帰国したりすると、それを口実に集まって食べて飲んで騒ぐという気の置けない仲間たちであって、会員証もないし共通の趣味があるわけでもない。年齢も幅があるし、性別もバラバラ、所属もバラバラ。サラリーマンもそうではないひともいる。記憶が正しければ、結成されたのは2005年前後。しかし、振り返ればゆるく10年以上続いている。

ILMS(アイエルエムエス)というのは、I Love MySelf。自分大好き軍団。というわけで、唯一、誰がつけたかその会の名前のみが会則っぽく機能している。つまり、程度の差はあれ、みんなILMS。好きなことをしている自分が好きで生きている。

秘密の会だからメンバーは秘密なのだが、業界では有名な顔ぶれも一人ならず所属している。秘密とは言っても別に閉鎖的ってわけではなく、メンバーの誰かがいいんじゃないかなと思って誰かを誘ってきて、なんとなくノリが合って楽しければ次もどうぞって感じ。何か楽しいことしたい、みんなに会いたいという人がふわっと企画したらなんとなく集まれる人が集まる。しばらくステルスモードになっていた誰かが顔を出せば、やあやあ、久しぶりってかんじで暖かく迎えられる。

普通の世界でそんなこと言うと、調子に乗っていると怒られそうな「俺のファンがさぁ~」という無防備な発言も、なにしろそこにいるみんなが自分のこと好きなので「も〜、自分大好きなんだからぁ!」と、あったかく受け入れられ、なんなら会を代表する名言という扱いになる。ネタとして10年経ってもからかわれはするけれども、そこには愛がある。

今思ったんだけど、有名人がそこにいても、その人の個人であることを尊重して、こんなつながりもってるぞ〜なんて言いふらして自分を大きく見せようとするような人がいないから、なんとなく会自体が秘密っぽくなるのだ。最近の言葉で言えば「リア充自慢」というやつだが、古来の日本語にもちょうどいい言葉があって、要するに「人の褌で相撲を取ろうとする」人はそこにはいない。

この不文律がわたしは大好きだ。一部のメンバーが集まっていたからといって「声がかかってない!」とすねるようなひともいないし、広く声かけて来ないからといって「つきあいが悪い!」と責められることもない。

それは裏を返せば、メンバーのみながその会以外のところでそれぞれ居場所をもっているということでもあるのだが、互いに好意と信頼で繋がれる人間というのは、自分自身のことも基本的に好きで信じているのだと思う。

というわけで、ILMS。メンバーが顔をあわせるのはそうしょっちゅうというわけではなく、年に何回かなのだけれど、そこで誰かが泥酔しようが昏睡しようが踊り狂おうが、自己肯定タイプが集まると世界はこんなにも過ごしやすいのだわと、健やかな気持ちになって帰ることができる。

というわけで、秘密の会ILMSの秘密、そこから、ILMSの勧めなのでありました。みんな、アイ・ラブ・マイセルフで生(い)こう。

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