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ロイヤリティ

急に寒くなってきたので、愛用のバーバリーのトレンチをクローゼットから出して見たら、袖、裾とベルトの痛みがひどいことになっていた。

昨年クリーニングに出すときは見慣れすぎていて引っかからなかったのだが、落ち着いてみると、貧乏探偵なら様になっても、印象管理が大事な個人事業主の中年女が着てたらよくなさそうな感じである。

同じ属性の方々はだいたい、SNSなんかでは品よく華やかな服を着て、髪もくるくる、肌もつやつややな写真を使っている。私も独立したての時、プロにお願いして素敵写真を撮ってもらったんだけど、どうもなんか尻がムズムズするので、結局自撮りに差し替えてしまった。いや、プロフィールにキレイな写真を使うのは当然だけど、いざ生身で会ったときに「だいぶ劣る…」と心の中で思われるのがいやなのね、多分。

それはともかく、トレンチコート。実はこれは15歳の誕生日に買ってもらったものなんで、もう30年、ともに生きてきたやつなのだ。愛着があって、簡単には捨てられない。

でも流石にもう買い替えたほうがいいかなあ、と悩みつつ、バーバリーのサポートウェブを見たら「100年コート」ってキャッチが目に入った。

それで、そうか、100年着ても許されるのかと思って、2度目の直しに出すことに決めた。

それで、銀座の旗艦店に電話で問い合わせて、修理に持ち込んだ。長く着ていて愛着があるのですということを伝えると、担当の方は「この生地、デザインのものは手に入らないのですよね、着ているうちに出てくる風合いがかっこいいですよね。英国では、代々譲って着続ける家もあるんですよ」と言って、直せないベルトや襟元についてはこういうアレンジができるということまで、細やかに提案してくださった。

時間に裏打ちされた信頼感が深まった。こういうのこそ、本物のブランド・エンゲージメントというのではないか。

確か、わたし十年前くらいに、ロロピアーナのキャメルのロングコートが欲しくてたまらない時期があって、でも、日本で買うと100万くらいするので諦めて、かわりにこのコートを修理しているのだ。だから、2回目のお直しなのだが、それができることにちょっと感動した。今バーバリーのロングトレンチの新品を買おうとすると、ロロほどではないが結構いい値段。だけど、ここに実証結果を持って伝えたい、絶対にもとが取れるよ!と。

そもそもトレンチは軍服だから頑丈で、ほんとに一生着られるのだ。今までかなりラフな扱いをして来たけど、これからは丁寧に管理して、大切に着続けようと思う。そして、いつか、あーちゃん(3歳)の背が高くなったときに譲れるといいな。譲ることができなくても、ヨーヨー(6歳)にも、最初の大人コートには、バーバリーのロングトレンチを買ってあげたいと思う。

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