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Point Merge Systemについて

今回のコラムでは今話題(?)の「ポイントマージシステム」についてお伝えする。

ポイントマージシステムを見る前に、まずは航空管制とは何か。
航空管制とは、航空機を離発着させる、運航する際に、航空法96条に基づいて国土交通大臣の代理として管制指示を与える存在のことを指す。具体的には、航空機の旋回、上昇、降下、航空路の選択、追い越しなどなど・・・航空管制の定番文句である「cleared for take-off」なども、法制度上は国土交通大臣による指示として受け取られるものである。
航空管制には、基本的に2つの要素が求められる。まず一つは何と言っても安全性だ。そもそも管理が効いているからこそ、航空機は極めて安全な乗り物として名を馳せているのであり、ここに妥協は許されない。もう一つは効率性である。航空機が現在、相当早いスピードで拡大し、2030年までには世界での航空機利用が2倍に増えるなどもいわれる昨今、空はますます混雑している。それらを裁くために、効率性は必要不可欠なのだ。こうした背景から、航空管制には様々な技術が導入され、これが「航空管制科学」として成立している。この背景については、伊藤恵理先生の書籍「空の旅を科学する」の中で紹介されており(個人的には第2弾を期待している)、是非一読されると良いだろう。

ポイントマージシステムは特に空港における管制についてのものなので、管制空域の構造について説明したいと思う。管制空域は主に3つへと分けられる。一つは航空交通管制区であり、主に200m程度より上、空港と空港を接続する空域について担当する。一番下のレイヤーは管制圏と呼ばれるもので、空港に設置のタワーやそれに類する期間が、空港周辺半径9kmの管制業務を担当している。これらだけでは空港への進入機を捌き切れない場合、空港には「進入管制区」が独自に設けられ、専門の航空管制官の指示に従って空港までの誘導が行われることになる。日本では東京(羽田・成田)、関西(神戸・関西・伊丹)、福岡、那覇などに設けられている。

航空管制概況

さて、ポイントマージシステムについて説明しよう。先ほど話題に上がった進入管制区には空港の滑走路まで通るルートが設定されており、基本的にはそれに沿う形で航空機が運行される。このルートはいくつかの通過点と、それらをつなげる勾配付きの線で構成される。しかし、安全性と効率性を考慮した際に、その対応だけでは間隔が詰まったり、積乱雲が避けられない場合が存在する。そのため「レーダー誘導」という、航空機の位置を逐次把握しながら管制官が細かく指示を与える管制方法が、追加で行われることが多い。日本の管制官についてはこの方式を採用するパターンが極めて多いと言われ、空港のネックとなっているのか効率を向上させているのか、わからない面があった。航空機の間隔制御が難しくなる反面、ショートカットして滑走路へ進入させるなど、効率を上げる側面も持ち合わせるからだ。ただ確実に、既存のルートに書かれていない行動は、管制官とパイロットの業務量を増やしていたと考えられる。

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この課題をある程度吸収し、安全性と効率性を両立させるために、2019年夏から導入されたのがポイントマージシステム(PMS)である。このシステムは、以前設定されていた通過点と線による構成はそのままに、進入経路をある一点を中心とした円弧状に設計することで、時間調整の余裕をシステム的に作り出した。最終的には中心点から直線的な最終経路へ入ることになり、間隔をかなり自由に調整できるほか、かかる指示の回数もレーダー誘導よりシステム的なものへ変更でき、関連主体への負荷を低減できる可能性がある。また継続的な効果を伴う進入も可能になり、経済的な運航が可能との調査報告もある。このシステムが羽田空港に導入されたことで、間隔ベースから到着時間ベースでの運航への機運が高まるかもしれない。現在どんな変化が起こっているかについての報告はまだないため、調査を進めて参りたい。


参考:https://www.eurocontrol.int/news/tokyo-haneda-one-worlds-busiest-airports-set-implement-point-merge-eurocontrols-innovative

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