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市民参加の難しさ、プラットフォームの可能性と一抹の不安と ~LINE Smart City Meetup #5 記録~

LINE Smart City for Fukuoka の南方様より、私が前回書いたノートに対してフィードバックをいただいた。

ここでの以下の指摘について、私はあらためて気づいたことがあった。そこで今回は、この指摘を踏まえ、ポジティブな論調で今回の感想をまとめておきたい。

僕らが解くべき問いを、レベル6〜8を実現するサービスはどんなものか?
ではなく、レベル1→8の変化に連続性はあるのか?に置き直したのです。
永田さんご指摘の通り、その連続性についてはまだよくわかってません。
でも僕らは、このテーマを研究し連続性を証明できる可能性がある唯一のプレイヤーだと自負しています。

「蛙飛び」の難しさと市民意識

LINEのスタンスとして、住民参加レベルを上げたサービスを開発するのではなく、結果として連続性があるのかを検証する、というのは非常に面白いと感じた。現在のところ、市民参加の低いレベルから高いレベルをすべて補完する民間のシステムは、日本にはないように見受けられる。それこそ海外において、すべてのレベルを含むであろうDecidimなどのシステムは導入されているものの、これは日本国内になるとかなり限定的なレベルのシステムとして扱われている(具体的には「聴取」「提案・提言」のレベル)。これは現在、東京や横浜で同システムの導入を支援している電通や博報堂などの意向もあり、既存のステークホルダーの結束を乱さない程度に導入せんとした結果であろうと思料する。高次のシステムをいきなり導入できない事例として、これは十分だろう。Decidimの発祥であるバルセロナにてシステムにかかわった東京大学 先端科学技術研究センターの吉村有司氏は、バルセロナにおける対話へのオープン性が、システムの機能へ大きな役割を果たしたとも言及している。

一方で、市民参加の促進を図ろうとしているのは行政機関も変わらない。近年の法整備の中で、ボランティアの活用やNPO、企業の参加などについて、かなりの制度改革が行われている。Meetupでも若干の言及をしたかもしれないが、2009年の鳩山由紀夫政権時に導入への議論があった「新しい公共」やその円卓会議を通じて、近年でもNPO/NGOを中心とした市民団体参画への制度改革への議論があった。また最近SFCの入試でも紹介されたように、NPO法人フローレンスが幼児保育の分野でモデルケースの実装を行い国の制度となるなど、市民発の政策立案は加速しつつある。2013年に成立した「民間の能力を活用した国管理空港等の運営等に関する法律」や2018年に成立した新PFI法の議論は、指定管理者制度の拡充やコンセッション方式の容認をはじめ、多様な市民参加のスキームをもたらした。このような状況下で、LINEはどこで優位性を見出すべきだろうか?

LINEの優位性としての包括性

わたしはこれについて、LINEが誇るユーザー数を軸に、多くの人をひっくるめた市民参加や都市の在り方への議論を実現させることこそ、優位性への近道ではないかと考えた。なぜなら、現在行われている市民参加の方向性は、多くは主体を制限したものだからである。

例えばNPOによる課題解決策の提案は、確かに重要で新規性があるが、実際のところ一部の需要を持つ人々が集まった団体による提案に過ぎない。この状況が起こす問題点として、システムの妥当性について議論されない、偏ったシステム実装となる、といったものがある。つまり、社会に当てるパッチについて、一部の人しか議論に参加できず、多くが取り残される可能性があるのだ。これは主体を置き換えても同様である。私の問題意識に引き寄せれば、「交通事業者による政策立案は魅力的だが、多くの人を取り残しかねない」となる。

この状況を解決するには、①各団体への情報アクセスを均質化したうえで議論の俎上に載せ、②すべての人が当事者となりうる状況で議論を行う 必要がある。LINEは多くの人が参加するプラットフォームであり、包括的な役割を果たせるのではないかと考えている。ビジネス面でもLINEの包括性は大きな武器だが、これは公共性を実現するうえでも重要だ。

ただこの様な包括的なシステムについては、一方的な役割を果たす暴力性を持たぬような配慮について仔細に、慎重に検討するべきだろう。公共的なプラットフォームとはつまり、だれもがアクセスできる空間であるとともに、(アーレントの定義に基づけば)それぞれの主体が節度をもつことによって保たれるべき空間でもある。このバランスを取りつつのスペース運営は、LINEはオープンチャットにてノウハウの蓄積を行っているであろうが、これをそのまま適用すべきかについても検討せねばならない。

LINE Fukuokaへの期待

個人的には、今後のLINEについて、蛙飛びを期待していたところはある。SFCでの学友である栗本拓幸が、彼が代表を務めるLiquitousにて目指す世界観に、ある程度共感している部分があるからだ。

ただ、それぞれの段階を踏んだ連続的なステップアップを実現していくという方針なら、それも悪くないだろう。結果的に目指す世界は同じであり、アプローチが異なるだけだからだ。私自身も自身の実践について進めつつ、LINEがどのような飛躍を遂げるのかについて、今後も学んでいきたいと思っている。

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