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おんもらき

 25回目の誕生日を間近に控えている。夏休みも夏休み、お盆の時期の生まれだから小学校の頃から誕生日を祝われることが少なかったが、学校を卒業すると尚更だ。祝われはしなくても、毎年自分の年齢に驚く。

 アスリートやミュージシャンのように輝かしい人間になることはなく当然のように会社員をやっているが、車にはねられることもなく、犯罪に手を染めることもなく、心身ともに十分健康で大学を卒業して、正社員で働いていることは案外普通ではないかもしれない。YouTubeやinstagramがあるから今や誰でも有名人になれるとでも言わんばかりの風潮を時たま感じるが、知り合いが始めたというYouTubeは全く振るっていない。

 好きだったファッションブランドが二年前に事実上終了した。そのデザイナーが新たにブランドを立ち上げることを知ったときはそれはもう嬉しくてたまらなかったが、ブランドの方向性が前ブランドと真反対だったので複雑だった。

 好きだったバンドの曲を昔ほど聴かなくなった。興味がなくなったわけではなく、新曲が出たら絶対にチェックするのだけど、気づくのが遅くなった。中学生のころは、新曲の情報はいち早くキャッチして、CDリリース前にラジオで放送されるものならかじりついて聴いていた。

 あるブランドが立ち上がっていたことを知った。通い詰めていたアパレルショップ(いまは閉店している)のスタッフのお兄さんが始めたブランドだった。ファッション業界特有のデザイナーの名前を冠するブランド名で、珍しい名前だったのですぐにわかった。Tシャツにロゴやグラフィックをプリントした安易なものではなく、おそらくテキスタイルから別注していて、それはそれはちゃんとしていた。モデル、メイク、カメラマン全てがプロの仕事によるルックは、すでにどこかのコレクションに出ているのではと思わせる貫禄があった。

 母校の高校の校舎建て替え工事はまだ終わっていないらしい。最近は何もかもが自分の想像の先をいっているから、思っているより進んでいないのもそれはそれで驚かされる。高2の頃から工事が始まって、高3の1年間は取り急ぎ1棟完成した新校舎で過ごした。みんなボロボロの校舎に慣れていたから、わざとらしいくらい新しい校舎に当時はコレジャナイと不満を漏らしていた。卒業後にまるっきり変わってしまった母校を見るより、1棟にでも思い出をなすりつけておけてよかったと今は思う。

 大学2年のころ、丸一年間お金を貯めたうえで24回払いで買ったベースだが、すっかり弾く機会が減った。弾く機会が減った割に、比較的最近楽器スタンドを買い替えた。単なる整頓のためかそれとももっと意味合いがある買い物なのか、自分でもよくわからない。大学に入ったら本格的にバンドをやるという夢はついに叶わなかった。誕生日が近いということは、今年の夏ももうあっという間に終わるなと思った。

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