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あるインタビューで聞いた一言を思い出す。

「誰もが前に進む時に真っ直ぐ歩いていると思っていますが、後で振り返って自分が歩いてきた道を見てみるとくねくねと曲がっていたりします。私たちの人生がまさにそういうものでしょう。」

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今年の果てに着き、少し立ち止まって自分が歩いてきた一年分の道を振り返ってみる。毎日前に向かって必死に歩いていたけれど、その苦労に比べたら大した距離を進めたわけではない。分かれ道に立ち止まって悩んだり、入っていた道をまた辿って出てきたりして、やけに複雑に足跡が残った一年だ。その分幸せなことや新しいことも、辛かったことや悲しかったことも多かった気がする。

一年間どれだけ進めたかという結論だけ見ると少しガッカリするかもしれない。しかし地図を見て正確な道を探して真っ直ぐ歩くことだけが正解ではない。迷ったり寄り道したりして、たまには地面に座って休んだりしながらでも、自分の力で進んでみることが大事なんだと学んだ一年でもある。

どんなに真っ直ぐ歩こうとしても、結局振り返ってみると曲がっているのが人生だ。だったらその「真っ直ぐで正確な道」に執着する必要があるのか。迷いの時間こそが旅人を育てる。まるでゲームみたいだ。草むらに立っている敵を全て相手にするには時間がかかる。戦うことが面倒であれば敵から上手く隠れながら進めばいちいち戦わなくてもよくなり、早くストーリーを進めることができる。その方が当然楽である。しかし彼らを相手にして真面目に戦ってきた時間は、その後どうしても避けられない強い敵と戦う時に真価を発揮する。

人生という道は、「誰よりも早く、遠く」行くことだけが能ではない。少なくとも自分はそう思っている。この世にハッキリとした結論がないように、人生にゴールなどない。ゴールがないのにずっと走り続けるだけだと途中でバテてしまうだけだ。

一生懸命走りながら後ろを振り返って自分が過去にどれだけ成功したかを気にしてばかりの、あるいは自分の子どもがどれだけ成功したかを気にしてばかりの人生は送りたくない。それよりは冒険に出た旅人のように色んな町に寄って色んな人と出会い、道端に咲いている名もなき小さな花に喜びを感じながらゆっくりと歩きたい。それが自分に与えられたこの道を一番楽しめる方法である。しかしまだ旅路の途中。そんな穏やかな人生を歩むことが私の夢なのだ。

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