1.品質管理の意義

経営工学ライブラリー
品質管理 谷津進

A1.Summary

品質管理の概念、変遷、コストを数ページでまとめている。品質管理用語が多く、その背景を認識して読めるか否かで価値が大きく異なるだろう。何度も折に触れて読み返すことで、認識を整理できる機会にできる章であった。
品質管理も、例に違わず、目的を彫ることから始まる。

A2.節ごとの要約

1.1 品質管理の概念

TQC(総合的品質管理)に至るまでの変遷を説明している。品質管理の定義に対して、jis z 8101の 

買手の要求にあった品質の品物又はサービスを経済的に作り出すための手段の体系.品質管理を略してQC(Quality Control)と言うことがある.

jis z 8101

を引用しながら、品質管理の基本的な要素が

  1. 品質を重視する価値観

  2. 事実に基づく解析的アプローチ


があると言及している。加えて、上記の定義のように、品質管理では、


対象を明確に規定し、目的を優先させ、そのための手段はその範囲を一切限定していない
……
方法が優先するのでなく、対象である品質が優先するのである

経営工学ライブラリ 品質管理 谷津進

と説明している。

日本語の「管理」という言葉に惑わされる人が多数いるだろうが、品質管理のコアで携わったいた人間は現在のマネジメントも込めた用語として使用していたのではないかと推察している。一方で、QCという英訳があてがわれたこと、目に見えて成果を理解しやすいSQCの手法が普及していく事で、どうしても狭義の意味合いでの理解が広まったのではないだろうか。
昨今は、暗黙で認識されていた広義の意味合いをより明示的に示すようにTQMなどで表現しているように感じる。
品質に向き合うという事は、事業の目的を定義することから始まると私は認識するが、これをより明確に示す為にTQMなどでよりブレイクダウンしているように感じている。


1.2 品質管理の変遷

1911年のフォードシステムから、管理図法、抜き取り検査法。科学的管理法。
品質、質を定量化する品質特性、代用特性の概念を導入し、その特性のばらつきを評価するSQCの思想。
品質は製造で作り込め。
そして、品質管理が製造プロセスだけでなく、経営の重要な道具であること理解が進み始めてTQC、品質保証の概念が強調され始めた。

日本の変遷も含め、概略が述べられている。現代では、品質特性、代用特性という用語がサラサラと流れている。その中で、本当にその特性は品質と紐づいているだろうか?という思考を忘れてはいけない。そして、仮説をもち検証を繰り返していくことで、初めてその組織の価値ある技術の一つとなると思っている。
と考えていると、色んな実験できる設備とか場所とか、田舎で色々やってみたいなとか考えちゃう。しかし、生活が優先してしまう。

1.3 品質とコスト

品質について。
品質の概念において、客観的物理特性質、主観的側面があることに言及しつつ、製造業の品質管理を主題として品質概念の概要を説明している。
プロセスで層別した、企画品質、設計品質、製造品質に触れにら、各品質要素のポイントを捉えている

コストについて。
SQCの基本思想で、
「品質が上がればコストは下がる」
と説明している。これはあくまで、製造品質に関してである。また、品質コストの概念に言及し、

  1. 予防コスト

  2. 評価コスト

  3. 失敗コスト
    社内失敗コスト
    社外失敗コスト

さらに、買い手の立場の視点
「消費者が製品を購入してから、使用を中止するまでのライフにわたるトータルコスト」として
ライフサイクルコスト=取得コスト+維持コスト
として示している。

維持コストを現代ではより分割していそうであるなと感じた。保全コスト、運用コストなどなど。品質が上がればコストが下がる。という視点は、失敗コストに言及しているだろう。
 これらのコストは顧客満足を信頼を獲得できる品質と突き合わせて初めて意味を成す。目的に対して価値あるコストだろうか?損失関数、許容差設計などの考え方がここで生きるのだろう。やってみたいなと思いつつ、試し切れていない。
一方で、私はコストについても品質の一部として考えている。なぜなら、コストも買い手の要求に含まれる一要素だからである。
QCDと分けられて明示されることがが 多い世の中ではある。Qの概念は包括的だ。

対象(3.6.1)に本来備わっている特性(3.10.1)の集まりが,要求事項(3.6.4)を満たす程度。

ISO9000:2015

事業が提供するモノ、サービスの備わっている特性にはもちろんコストも、デリバリーも含めて考えられる。だから何?と思うかもしれない。一方で、品質と聞くと、製品の物理・機能特性のマネジメントがフォーカスされる。
私としては

  • モノの品質

  • サービスの品質

  • 価格の品質

  • プロセスの品質

  • 社会的品質

これらが総合的に評価されて、顧客の価値、成功に寄与すると考えている。顧客の要求に適したモノを作れば事業継続性があるのだろうか?
いや、良い品を顧客体験してもらわねばならないでしょう。なので、サービスの品質もありますね。というように。

A3.学び

品質管理は、製造業から発展してきて、統計的なアプローチが業界として幅広く浸透していることを感じた。一方で、どの事業でもコアとなる、事業経営の理念、目的など経営要素と密に繋がることが、浸透しにくいのだなという所感もある。品質と聞くと、コスト、デリバリーと分裂して認識するケースはないだろうか?品質は全てにある。なぜなら、全ての要素で顧客などのステークホルダーから、要求事項があるからである。それらを満たす対象であれば、品質の概念は適用可能である。と考える。


A4.課題の認識

製品、サービス(デリバリー、コスト)、プロセスに品質の考え方が適用可能だと考えているが。
全てに品質の概念を適用するメリットは何かあるのか?という疑問が湧くと思う。
しかし、私はそのメリットを感じている。
現状の持論を下記に示す。

  • 要求事項の明確化から始まるため、必然的に顧客志向(ステークホルダー)に繋がる。

  • 品質、代用特性など大元の要求事項をブレイクダウンすることが必然的な思考である。つまり、具体的なプロセス、組織、管理項目の要件に繋がる

  • 事業の継続的な成長に必要な要素は何か?を考える機会を創出する。ステークホルダーに対して、何が価値あるモノなのか?製品か?サービスか?もっと突き詰めると、SWOT分析の要素もある。

など。他にも沢山ありそうなので、今後で少しずつアウトプットしながら、より整理整頓していく。
下記の考え方も強く推したい。グラフィックにする機会があれば追加しておきたい。

  • 品質は、対象の特性が要求事項を満たす程度であるということは。尺度の概念。

  • 過剰な品質ではない。過剰な状態は、まず、要求事項の枠が前提にある。そして、機能、特性、性能がその枠を越えうることはあるだろう。つまり、過剰になりうるのは、品質ではなく、その対象の特性である。

  • 品質の最大値は享受する主体の要求を超えない。

  • あるいみ、過剰な特性を提供しているならば2つの策が思いつく。特性をコントロールして、余剰を小さくする。
    もしくは、ステークホルダーの要求事項を拡大させる。具体的に言えばら、ブルーライトカットのレンズはこれに当たると思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?