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【BTC市場分析】現物とデリバティブのマーケットインパクト

こんにちわ、UKIです。
このところnoteの更新頻度が落ちていましたので、2000字程度の短編の分析レポートを何回かに分けて集中連載と思います(たぶん)。少し砕けた調子で思うところを書き出します。

本日9月23日にBakktの現物決済型先物がリリースされました。これは現物とデリバティブとを結ぶ貴重な役目を担うものと思われます。
ビットコインには現物市場とデリバティブ市場がありますが、デリバティブ市場のほうが圧倒的に出来高が大きく、現物市場はごく一部の大手取引所を除いて閑散としがちです。
ビットコイン現物はマイナーからの恒常的な供給売り圧力が発生しますが、その反面、買い需要が発生することは殆どありません。瞬間的な送金目的を除くとビットコインの需要は殆どなく(せいぜい証拠金需要程度)、ビットコインをHODLするのであればロールオーバーの手間さえ省けば先物のほうが効率的にできますし、現物レンディングに関しては取引所GOXリスクに常に晒されるためカストディサービスなくして大きな資金は流入しづらいです(もっともそうなったときは金利が大きく目減りすると思います)。
需給面で見ると圧倒的に売買のマッチングが成立しづらく、このためマイナーも値崩れを避けるため気楽に売りを入れることができません。ゆえにビットコインの取引は殆どが投機目的となり、デリバティブ市場の出来高が増加して価格形成もデリバティブ主導となってしまいます。ここで現物決済の先物が登場すると投機筋とマイナーのマッチングができるようになり(当然現物市場以上の十分な出来高が必要ですが)、ひいては健全な価格形成へ貢献する可能性があります。

(上記は私の個人的な見解です)

前置きが長くなりましたが、上記のような考え方から現物とデリバティブのマーケットインパクトを個別に把握しておくことは、トレーディングの観点からも非常に重要であると思います。

ビットコインの現物市場

BTCの取引市場は世界中に存在しますが、出来高ランキングを見てみると聞いたこともないような取引所が上位に食い込んでいます。これは顧客を呼び込むために出来高の水増しが行われており、それを指摘したBitwiseの研究レポートが大きな波紋を呼びました。以下にそれなりの取引所をつらつらと挙げてみます。

(1)Binance
ビットコイン現物で世界最大の市場。19年7月にはマージン取引(これは現物取引)、19年9月に先物(こちらはデリバティブ取引)の取り扱いを開始した。独自トークンBNBを発行し、取引所周りの経済圏は盤石。

(2)Bitfinex
いろいろな噂が絶えない取引所。マージン取引(現物)を扱う老舗。19年9月に無期限先物(デリバティブ)の取り扱いを開始したが現時点で殆ど出来高がない。無期限システムがBitMEXに酷似しておりBitMEXから皮肉を言われていた。

(3)Coinbase、Kraken、Bitstamp
BitMEXやCME先物の価格参照先になっている。Coinbaseは感覚的にかなりまともな取引所であるが、日本人は口座が開けない。Kraken、Bitstampは出来高が小さめで仕手筋の価格操作にうってつけの取引所となっている。

(4)Gemini
ウィンクルボス兄弟の取引所。CBOE先物の価格参照先。出来高は決して大きくない。

(5)Huobi、OKcoin
Binanceと並ぶ中国大手だが影が薄め(OKは現物より四半期先物が有名)。


ビットコインのデリバティブ市場

続いてデリバティブの市場です。

(1)BitMEX
言わずと知れたデリバティブの雄。無期限先物という画期的なシステムをいち早くリリースした業界の開拓者。

(2)OKEx
一般的な四半期先物では最大級の取引所。

(3)bitFlyer
現物でも先物でもない、よく分からない差金決済商品「bitFlyer FX」で一世を風靡した。規制のあおりを受けて出来高が尻すぼみ中。

(4)CME
米国シカゴにある伝統的な先物取引所。機関投資家向けであるが出来高では
BitMEXに及ばない。

(5)Binance、Bitfinex、Huobi
Binance、Bitfinexでは先物の取り扱いは始まったばかりで出来高は薄い。HuobiはHuobi DMという子会社で先物を取り扱っている(日本人は取引できない)。


マーケットインパクト

それでは現物市場の代表はBinance、デリバティブ市場の代表はBitMEXとして、以下にマーケットインパクト(1時間当たりの売買フローと値幅の関係)を見てみます。

無題

<マーケットインパクト>
(1)現物
1BTCあたり$0.095の値動きが発生します。
1500BTCのフローが発生した場合の値幅は、およそ$143です。

(2)デリバティブ
1BTCあたり$0.027の値動きが発生します。
1500BTCのフローが発生した場合の値幅は、およそ$41です。


1点気になる点としては、Binanceの決定係数が低いことです。これはテイカーVOLと値動きの関係が弱いことを意味し、大きい指値でフタをするような価格形成が多いことを示唆していると思います。瞬間的に強い需要が発生したときにインパクトはさらに大きいものと考えています(1500BTCのフロー発生時、およそ$375程度と推測しています)。

現物のインパクトは少なく見積もってもデリバティブのおよそ3.5倍であり、同じ数量でも現物需要が発生した場合は相場への影響が大きいことが分かります。もう少し詳細な分析について、また記事にしたいと思います。