暗号通貨の市場構造-ETH無期限先物に関する仮説
最近、ツイッターのTLでBitMEXのETHファンディングレートのトレードへの活用が注目を集めています。
ETHファンディングレートとBTC値動きの関係から、現在の暗号通貨の市場構造に関する仮説を立てたので報告します。
1.発端はETH無期限先物
BitMEXは2018年8月にETH無期限先物をリリースしました。
これが全ての始まりです。
まだ広く知られていませんが、ETH無期限先物は通常の先物商品とは異なる性質を持つのです。
ETH無期限先物に関しては既に詳細なNoteが執筆されています。以下のFcukOKsan氏(ツイッターID:@FcukOKsan)の一連のNoteをご参照ください。
非常に有用ですので必ず目を通すことをお勧めします。無料部分に十分な情報を書かれています。
重要な部分を抜粋すると、
MEXでETHを買って、信用取引とかで現物ETHをショートして両建てポジションを作ると、常に儲かるポジションが作れてしまう。
これはETHが上昇しても下落しても利益の出るポジションであり、オプションでいうロング・ストラドル(ガンマロング、ポジティブガンマとも呼ばれます)のようなポジションに当たります。ただしこのような特性を実現するにはBTCとETHの連動性が必要となります。
2.オプションを使わないオプションライクなポジション
オプションを使わずともオプションライクなポジションが作れるということが最大のミソで、低コスト(以下説明)で且つオプションの流動性ではありえない大きなポジションを作れます。
上昇・下落どちらに動いても利益が出るため、ボラの大きい暗号通貨には最適なポジションと言えるでしょう。
<ポジション構築コストについて>
裁定的に考えると常に儲かるポジションなど存在しないため、BitMEXのETHロングにはプレミアムが乗るはずです。つまりETHロングは基本的にファンディングコスト支払い側となるはずです。ただし、状況によってはロングでもファンディングコストが貰える場合もあり、指値で建てる場合はメイクフィーも得ることができます。
3.相場操縦との関連
上記のポジションは、暗号通貨にトレンドができているときは利益が出ます。しかし逆に相場が動かなくなってしまったときは、ポジションの構築コストや維持コストによる損失が出てしまいます。
ではどうすればよいか?故意に相場を動かせばよいのです。
Pump&Dumpやシンプソンズチャートと言われる、暗号通貨でよくみられるチャート形状です。これにより相場操縦による利益だけでなく、ガンマロングの収益を得ることができます。
ただし相場を動かすときに注意しなければならないことがあって、当初述べたとおり、ETH両建てによるガンマロングはBTCとETHの連動性が必要です。このため相場操縦する際にはBTCとETHをペッグして振る必要があります。
相場操縦を行う際、上昇方向と下落方向どちらに振るかは任意に選べます。ガンマロングではどちらに動いても利益が出るからです。状況によって振りやすい方向はあるかと思いますが、一番分かりやすいのは問答無用で金利収入がもらえる方向に振ることです。
「相場操縦自体の利益+ガンマロングの収益+金利収入」
これらのスキームを行っている主体がいるという仮説を立てています。
繰り返しますがBTCとETHの連動性が重要であり、これがETH主導とも呼ばれる現在の暗号通貨市場構造を促進するものと考えています。以下は直近2/9に発生したPumpの5sec足です。これを見ると、XBTUSDとETHUSDの連動性を観察することができます。
4.ETH金利に従ったトレード
では、この相場操縦に乗るために金利を得る方向にポジションを持つとどうなるでしょうか。以下はETH無期限先物がリリースされた翌月である18年9月から本日までのバックテスト結果(上図:全期間、下図:1月以降)です。
資産は右肩上がりに伸びており、特に1月には殆どのPumpに乗れていることが分かります。
5.終わりに
これらのスキームには不整合な部分もありデータで完全に裏付けが取れているわけではなく、あくまでも単なる仮説の領域を出るものではありません。
しかし、ふとした市場の特性から全体の構造を推察する。そのような面白い事例であることは確かです。
暗号通貨市場には、まだまだ隠れた財宝が眠っていることでしょう。
信じるか信じないかはあなた次第です(あれ、このフレーズいらない?)