「たまこラブストーリー」に学ぶ演出技法 【時間のずれたシンクロ】
映画において、同じ場所や同じ立ち位置に配置されることや、同じセリフを違うタイミングで喋らせることで時間的な距離感を心理的な距離感や対比に使われたりします。また同じセリフでも前後の積み上げによって違う意味をもたせることができます。
たまこラブストーリーではたまこともち蔵がバラバラに喫茶店にてコーヒーを飲むシーンがあります。
そのシーンでは同じ立ち位置に両キャラを置くことですれ違っている印象を与えています。
立ち位置のシンクロ
映画前半では喫茶店の端の席にたまこが座りコーヒーを飲みます。後半では同じ席でもち蔵がコーヒーを飲みます。
特に意識していないのにシンクロした行動を取ることで心の奥底ではつながっているのですが、同じ空間にいないので寂しい印象を与え、すれ違いを表現しています。
同じ立ち位置に単独で座らせる = すれ違いを表現
引用元:たまこラブストーリー
セリフのシンクロ
この映画では、喫茶店のマスターがコーヒーの苦さは人生の苦さと一緒であると説きます。
映画の前半コーヒーを飲んだ際にたまこが「にがっ」というセリフを喋ります。この際にたまこは苦いので牛乳を入れたいという意思表示をします。
引用元:たまこラブストーリー
たまこはまだ人生や将来にちゃんと向き合っていないため、苦味をなくす牛乳を求めます。
映画の後半、もち蔵も同じくコーヒーを飲むのですが、その際砂糖を入れようとして思いとどまり、ブラックのまま飲みます。
その後もち蔵もたまこと同じく「にがっ」というセリフを言うのですが、これは人生や将来に向き合っていることをブラックコーヒーのまま飲むことで表現しており、牛乳をいれて薄めようとしたたまことの対比となっています。
引用元:たまこラブストーリー
たまこの「にがっ」 + 牛乳を求める = 人生に向き合えていない
もち蔵の「にがっ」 + 苦手でもブラックで飲む = 人生に向き合っている
このように同じセリフを違うタイミング、違うキャラクターに言わせることでそれぞれを対比させています。
まとめ
映画において同じ場所を違うタイミングで使うことで、時間経過だけでなくすれ違いを表現することができます。
また同じセリフを違うタイミングやキャラクターで使いつつ、その前後に心情や演出的な積み上げをしておくことでそれぞれの状況や心情を対比することもできます。
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