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対岸の彼女


不思議な展開にわくわくドキドキ。2組の2人組が人生を語り合うように対岸を歩く。そんな情景が頭の中に浮かんだ。

過去と現在とを対比する2組。それぞれの1人が同一人物なのだけれど、まるで違う。何があったのだろうか?そんな疑問をしっかりと読者に抱かせる。読み進めていくうちに、小説はそんな疑問を解いてくれるように語る。まるで、操られている気分だった。

読みやすいようで、人物像に混乱する。暖かいようで実は冷え切っている。そんなギャップが盛り込まれた小説だった。

『私たちの世代って、ひとりぼっち恐怖症だと思わない?』

『なぜ私たちは年齢を重ねるのか。生活に逃げ込んでドアを閉めるためじゃない。また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ。』

『人と出会うということは、自分の中に出会ったその人の鋳型を穿つようなことではないかと、私は密かに思っている。人と出会えば出会うだけ自分は穴だらけになったいくのだ。けれどもその穴は、もしかしたら私の熱源でもあるのかもしれない。』

『ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね。』

『マニュアルがあるとさ、人って考えることを放棄すんの、考えないと何も見えない、何も心に残らない。チップなんて、渡したことすら忘れちゃうけど、心からありがとうって言えるようなできごとは忘れないと思うんだよね。』
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