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HSPだとわかったらイキイキしはじめた話

「繊細さん」という呼び名で知られているHSP。
アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士が提唱した、感受性が鋭い性質を持った人のこと。
全人口の15〜20%、5人に1人はこの気質を持つといわれている。
芸能人が公言していることから、ある程度認知されていたようだけれど、私はその名前すら知らなかった。

でも突然、自分がHSPだと判明する日がくる。
その日、2021年へのカウントダウンが始まろうとしていた。

保育園時代に居場所をくれた『本の世界』 

物心ついた頃の記憶は、とにかく不安だらけの日々。
周りからいろんな刺激を拾ってくるので、脳内が処理しきれずパンクしてしまうのが原因だ。

✅特によく反応していたのが次の5つ。

◼︎太陽光、白熱灯
◼︎大きい音、特徴的な音
◼︎強い匂い
◼︎人混み
◼︎衣類などの感触

私の意識とは無関係に拾ってくるので避けようがないし、経験も浅いのでどう対処していいかわからない。

特に音に関しては、ひどい時だと動悸がして気分が悪くなってしまう。

加えて一定のリズムで動くものも苦手だったため、園児が大好きなブランコは超危険。

何が危険かって、キーキー鳴るブランコの音と、あのスイングする動きが残像となって脳裏に焼きつき、乗ってもいないのに乗り物酔いが起こるのだ。
それからは、音を聞いてもブランコの情景が浮かぶようになってしまったので、まず耳を塞いで聞こえないようにする必要があった。

そんな私を救ったのは、たくさんの本。
静かな空間で本の世界にどっぷりつかれば、周りの刺激を受けずに済むとわかったのだ。

お外での自由時間や、みんなと遊ぶことに興味はなし。
先生に見つからないようテーブルの下に身を潜めて、ひたすら本に没頭しつづけた。

この感覚は理解されないと悟った

本の世界は居心地がいいだけでなく、私の口を達者にした。

実際受け答えはきちんとできていたので「しっかりした子」のイメージだったようである。
ただし本の読み過ぎで、脳内が文字だらけになってしまった。

ところが、この文字だらけになった脳内では、勝手に自分と会話が始まるため私は「人の話を聞いていない子」でもあったようだ。

そんなある日、ふと気になったのが「みんなはどうなんだろう?」ということ。

いろいろ観察するもののいまいちよくわからず、ついに意を決してあの「ブランコゾーン」に踏み込んだ。
やはりゾーンに近づくと、あのキーキーする音は耳を塞いでも聞こえてくる。
気分が悪くなりそうなのを堪えて、そこに居合わせた園児たちを見回してみた。

「……ものすごい楽しそう。みんなは何ともないの?」

どうやら気分が悪くてうろたえているのは、私だけらしい。

この時、私の中にある感覚は「人に理解されないもの」として、心に深く刻まれる。
そして「本当にいいたいこと」を口にすることがなくなった。
話してみて、変だと思われることが怖かったのだ。

こうして、ますます本の世界にのめり込む。

ひとつ誤解がないようにいわせてもらうと、友だちがいなかったわけじゃない。
慣れた子や気が合う子とは、普通に遊べたのだ。

でもやっぱり疲れてしまうから、本の世界と行き来してバランスを取る必要があった。

耐性がつき始める

外の世界は刺激だらけでつらかったものの、登園・登校拒否をしたことはないらしい。
ただ保育園時代に、1度だけ親に助けを求めたことがある。
先生たちも手を焼いた、通称「暴れん坊」の標的にされた時だ。

ここが全ての原点になっている。

私は大人になっても、146㎝〜147㎝を行ったり来たりする小柄なタイプ。
小さく生まれて小さく育ち、女子は「かわいい」と評価したが、なぜか男子からは「チビ」とよくバカにされた。

あの「暴れん坊」が1番最初に「チビ」となじったのだ。
今思えば「チビ」の何がいけないのかと思うのだが、嫌がらせと同時に浴びせられる言葉は、なぜか「チビ」が悪いことのように聞こえる。

この時「小さい=ナメられる」という方程式ができあがり、なんとかせねばと思った。

そこで「保育園も学校も休まない」と決めたのだ。

案の定、小学校に入学してからもたびたび男子からイジメられたが、泣きながらみんなをボッコボコにするほどの負けん気はついていた。

特に決め技はない。
腹ただしさを全身で表現したまで。

例えていうなら、バトルゲームで技の出し方を知らない素人に、無茶苦茶な操作をされて勝ってしまったキャラのような感じだ。

こうして、外界の刺激から身を守る日々を過ごすうち、耐えることが当たり前になってしまった。
自分ではもちろん気づいていない。
大人になってから、友だちにこう呼ばれて気づいたのだ。

「修行僧じゃん」

HSPだとわかった日 

修行僧になっても、相変わらず刺激はつらい。
でも経験値も上がって、さすがに子ども時代よりはいろいろ対処できるようになっていた。

なので、人と接する必要があるものの、洋服が好きなこともあり仕事はアパレル業を選んだ。
とはいえ、忙しい職場でHSPにとっては厳しい環境にいる。
仕事をして疲れない人はいないだろうが、ことさらエネルギーをかっさらわれるのだ。

もともとHSPは共感力が高い特徴もあり、接客業は向いているらしい。
でもそれは1対1で、ゆっくり話ができる場合にいえること。
入社したばかりの頃は、今より落ち着いて対応できることの方が多かったが、ありがたいことにお客様が増えて忙しくなっていた。

この日は仕事で、休憩時間になったため1人で別室へ。

仕事中は刺激を拾うのに加えて気を張るので、休憩中にみんなと過ごすと、休むどころか疲れが取れないのだ。

いつもの端の席に座って、ホッとひと息。
スマホを見ると、目に入ってきたのがHSPという文字だった。

どこからHSPが出てきたのかわからないけれど、何かのニュースだったような気もする。
ちょっと気になって読んでみたら「これ私のこと?」と思えるような内容だった。

読み終えてすぐさま検索し、無料でできるHSP診断テストをやってみた。
100を超えるほど多い項目だったので、一瞬やめようかと思ったのだが、やり始めたら止まらない。 
おそらく過去に受けた全てのテストの中で、1番早く反応できるほど迷うことなく回答したのだ。

診断結果は見なくてもわかるけれど、一応見た。

「HSP強め」。

この時、何かから解き放たれたような、心地よい寝具に身を包んだ時のような安心感に包まれた。

HSPだとわかってから

なんだかとにかくうれしくて、職場に戻る時に軽くスキップしてしまった。

理解されないと思っていたので、誰にも話したことがなかったし、ただひたすら耐えてきたからだ。
しかも5人に1人って結構いるじゃない。

だけど「こんなにうれしいのはなんでだろう?」と振り返ってみてあることに気づいた。

実は思春期に「自分の感覚がおかしいのではないか」と悩みすぎて、妄想がふくらみこんなことを思っていたのだ。

きっと話したら、親は病院に連れていくに違いない。
そうしたら検査されて、もしかしたら手術されるかもしれない。
最悪、珍種として何かの実験台にされるかも!

今となっては封印された記憶だったけれど、その当時は自宅のトイレで真剣に悩んだものだった。

だから大人になって忘れていても、どこかで恐怖感として根強く残っていたのではないかと思う。

でももう変に悩まなくていいのだ。

そうしたら「もっと楽しく生きられるんじゃないか」と思えて、急にいろいろ試してみたくなった。
そこで、私にとってどんなものがよりよい環境なのかを検索。
いろいろ参考にしつつ「自分に1番合うものは、やっぱり自分がわかるはず」という結論になり、仮説を立ててアイテムを揃えはじめた。

たとえばHSPが回復するのに絶対はずせないのが睡眠。(そうじゃない人にとっても重要だから特に)。

そこで寝袋を買ってみた。
あの閉鎖的な空間に包まれる安堵感は、なんとも表現のしようがない。
もちろんベッドで眠る方が体にもいいと思うが、寝袋の空間はまた格別で、あまりにも良すぎて笑いが止まらなくなり寝れなかったほど。

今はウキウキにも慣れてよく眠れる。
特に集中して眠れるので、昼寝したい時に使うとかなり調子がいい。

そう。HSPだとわかってから、なんだか全体的に調子がいいのだ。

伝えたいこと

今もしあなたがHSPで、自分にとって要らないと思う感情があるなら、試しにそれを手放してみてほしい。


こんな感じ。

※ポイ捨ては禁止です。

これは冗談ではなくて、こうやってイメージして自分から不快なものを一旦離すと、少しラクになれるのだ。

もちろん、HSPという気質を持っているからといって対策を押しつけるつもりはないし「みんなこう」と決めつけるつもりもない。

それに「ほんとにバナナの皮みたいに捨てられるわけないだろう!」という声があるのもわかる。

できたらこんなに苦しんでない。
私自身がそうだったからよくわかるし、できないから困っていた。

でも今だから言えるのは、1回しかない人生だから、やっぱり「少しでも楽しく生きる方がいい」ということ。
矛盾しているようだけど「別に楽しくなくていい」ならそれはそれで構わないとも思う。

大切なのは「自分がどうしたいのか」。

「自分はこうしたい」「こんなふうに生きたい」と思う気持ちがあるなら、それを大事にしてほしい。

「気質だから仕方がない」と諦めるなんてもったいなさすぎる。

おまけ

話の流れは憶えていないが、同じ職場で働く1人の女子大生が、目をキラキラさせながら「私、繊細さんなんです」と話しかけてきた。

彼女はあいさつが気持ちよく、対応も丁寧で接客業には向いていると思う。

私は自分のことを繊細さんではなく「敏感さん」だと思っていたので、一瞬HSPだと思わなかったのだが、すぐに同類なのだと理解した。

そこで「あ、そうなんだ。私もHSPだよ」と答えた。

すると、彼女は微笑んで「絶対ウソ」と一層目をキラキラさせていうのだ。

うん、見えても見えなくてもどちらでもいいのだけれど、私が引っかかったのは、彼女が最初に「繊細さん」だといったこと。
つまり「あなたが繊細さんだなんて、何かの間違いです」といわれているようで、なんだか複雑な思いになった。

※ポイ捨ては禁止です。念のため。

ポイッと。

ちなみに彼女は、就職で旅立っていくことが決まっていたため、後日に今までお世話になったことなど感謝の気持ちを伝え合ってお別れをした。

なんだか、みんないろいろな思いを抱えながら生きていると改めてわかって、また少し元気になれた。

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