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"choir"voice.13「海へゆく曇り空の日」

"choir"voice.13「海へゆく曇り空の日」
act:the seadays / 白井太一朗 / ハルラモネル / THE MYHALLEY Ⅱ

タイトルは「海へゆくつもりじゃなかった」と、
the seadays(海)、THE MYHALLEY Ⅱの名曲「SOSOS」の歌詞から「上の空」を
ピックアップしたつもりが、京都、イベント中だけ、豪雨。
ぜんぜん曇りじゃない。
雨漢とっくん(犬人間ニョンズ)が主催イベントやってたからだとおもう……。
おい!

◆白井太一朗
本人は朝まで「(自分に)負けた」と言ってて、
まこちんやくぼんぬ交えて延々話した。
コントロール重視タイプと自認してるけど、まだまだ4分割、せめて9分割になってはじめて技巧派やでと伝える。
前回のライブがめっちゃよかったからもあるけど、
なんかこう、世界と闘ってないんだよな。

内向きの姿勢がまた中途半端。
ストイックに自分を高めようとか、
あるいは、長所を伸ばしてくことに専念するとか、
なにかしらのスタンスは見えてるだろうにそのどこへも帰着しない地点で甘えてる感がある。
「平均点の取り方は知ってる」けど、だからこそ、
そこへ安住できる自分と、そうしたくない自分の狭間でわちゃってなってる。

とはいえあれだけのギタースキルとスポークン・ワーズスキルを持ってるので、そこがもったいなさすぎて。
いやふつう、ユニットならまだしも、ひとりであんなに弾けて詠める人間、ぼくは知らないぞ。
さりとて理想が高いわけではない。
なんていうか、雲のような茫漠としたwanna beに留まっているから、
こういう感想になるんだろうなとはおもう。

平均球速130km台で、ウイニングショットもなく、
適度な荒れ球が放れるようになるのが、
太一朗にとっての正解なのか否かはまだわからない。
31歳のリアル。
でもあなたが21歳なら、あるいは31歳でもキャリア4年とかならともかく、
ここでみずから足踏みするようではあかんで。
(以上ぜんぶ直接本人に8時間ほど言ったことです)

でもめちゃくちゃすき。
韻の踏み方、譜割、ことばの選び方運び方、すっごいセンスがいい。
「ルービックキューブ/ミュージック/休日/YouTube」とかなんて、最高だ。
人間としてはめんどくさいのと繕った笑顔がむかつくけど、
一生つきあっていきたい。
オールラウンダータイプなので、自分にもよくわかる。
底上げなのか、弱点消してくか、とかよりまず、
自身と受け手を信頼できるようにしようね。

◆THE MYHALLEY Ⅱ
Vo/Gt鈴江が「普段ぼくはお酒飲まないんですけど」といいつつ飲んで板に上がり、
「マオロ(バー担当)お酒出てる?」
「ここはバー(※正確にはPUB)なんで、みなさん飲んでくださいね」と煽りつつ、
曲終わるごとに死んだワニの目をしてえづいてたけど、
ステージはどちゃくそよかった。
名前は変われど、大名曲「SOSOS」はじめ、
ほとんどTHE MYHALLEYやーん!伝統文化認定。だいすき!

音がでかい、とは一味ちがう、りっきーの粒ひとつひとつが飛んでくるベース、
みなみちゃんの縁の下の力持ちと見せかけて時折我欲が垣間見えるドラミング、
いい意味でリードっぽくないギター(ツインなのでそこの割り振りと鈴江も弾ける)、
調和が完璧だった。あとステージングがもう外タレ感バシバシ。
(余談ですがなぜかリハ前に1セントコインが発掘されました)
華があるんだよなあ。
こればっかりは学んで身につくものじゃない。
だからすごい。
たとえば村島洋一とか、ミズノミカとか、
「ただそこに咲いているだけなのにちょううつくしい」タイプとはまたちがって、
ものすごく計算し尽くしたうえで「ま、いっか」とぶん投げるかんじの華。
めちゃくちゃ相性のいいルームシェアってかんじ。

広義でいえば正統派ギターロックだけど、
UK、ブルース、GRAPEVINE感、いろんな要素がそこへまじって、
極上のメルティングポットが出来上がっている。
あと、あんまり言及されないかもしれないが歌詞のおもしろさもじわじわボディブロー。

◆ハルラモネル
これまで幾度となく観てきたなかで、
最高のパフォーマンスだったかといわれるとそうではないけど、
この夜はセットリストにいろいろ仕込まれていた。
前半4曲は「ハッピーエンド」からはじまり、
メロウ、ポップ気味な顔ぶれがつづいて。

もちろん1曲1曲はすてきだけど、
うーん、バンドとバンド(しかも音でかい)に挟まれてるから、
こういうギミックというかブリッジ的なセレクトなのかなとおもったところ、
5曲目「ランプ」で一気にギアを上げ、「最新世界」で会場を染め、
ラスト「ステージライトが遠ざかっていく」で、
本来荒れ球が魅力の奪三振高いピッチャーが戻ってきた。

ラモのよさ、っていろいろあるけど、第一はすごくクレバーなんだけど、
それをよしとしない態度、とぼくは勝手におもっています。
まるでミステリ小説の後半~終盤どんでん返しみたいなカタルシスがすごかった。
反則やろ。と、お酒がすすみすぎた。

冒頭、「最高のパフォーマンスだったかといわれるとそうではない」と、
書いたけど、それは単純に、ラモがいつもすてきすぎるだけで、
あと、ぼくが回数観すぎてるって話です。
岐阜の至宝。
ほんとに、なんでこんなにすきなのかと問われれば、
まず「ランプ」という曲が根幹にある。
本人からすればもう何年前の歌だし、いつまでも「ランプ」が代名詞とされるのは厭やろけど、
でもやっぱりこればっかりはスピッツにおける「チェリー」、ミスチルにおける「名もなき詩」みたいなもので。

しかしですよ。しかし。
「最新世界」というマスターピースがセットリストに加入した。
ドラフト競合12球団1位指名だ。ほんとうにやばい。
たぶんこれを演ってくれると当て込んで太一朗と組んだ自分を褒めます。てへっ。

なお、年内にもいちどVOXhallにきてくれます!
詳報はいずれ!

◆the seadays
優勝。
ここまでの3組ももちろんそれぞれすばらしかったけど、
比べるわけじゃなくって、純粋な優勝。
ちょっとここは旧VOXhallつながりであるとか、
あとベースくぼんぬは彼が10代から干支ひとまわり以上のつきあいとか(なんなら先月まで一緒にバンドしてた)、
いろいろで冷静な判断ができないキクチと、
ブッカーの耳と目で素直に感じてたchoriがいて、
でもほんとうにすばらしかった。

大音量だけど、ぜんぜん耳にうるさくないし、
しっかりと声が、歌詞が飛んでくる。
これはNO FUNやthanもそうだけど、すごいこととおもう。

また、基本的にはギターロックの歌ものバンドだけど、
1曲目に「きょうはchoriさんブッキングなんで」って、
スポークン・ワーズをのっけた曲からはじまって、
でもそこで媚を売らないかんじが最高です。
あくまでthe seadaysだ。
からの本領発揮3曲、そしてまたスポークン・ワーズではあるけど、
そもそも音楽として絶景すぎる「街」~「AONATSU」で締める流れがうつくしすぎた。
途中でも「フロム京都木屋町、the seadaysです」って、
最小限のひとことが死ぬほどかっこよかった!

売れてほしいという気持ちと、
でも売れたらクリープハイプとかtricotとか中村佳穂やんみたく
遠ざかってくのかなとおもうともうちょっとここらへんにいてほしい。
というブッカーのわがまま。

いや、でも、the seadaysはすごい。
なんとでも言辞を弄する詩人に「すごい」としか言わせないバンドです。

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