投資余力・借入余力の算定方法

前回のブログ(資金調達の在り方)で以下のことについて触れました。
まずは各事業を成長性と収益性の軸で評価します。
①成長性も収益性も高い成長事業にはヒト・モノ・カネを積極的に投資する。
②収益性は高いが成長性は低い事業は更新投資という範囲で事業を維持・更新するために必要な投資を実行する。
③成長性は高いが収益性の低い事業、これは将来の柱になる可能性があるため、商品開発や差別化、M&Aなど含めて収益を改善できるための抜本的な投資を実行する。
④成長性も収益性も低い事業には追加投資は不可で、事業売却やコスト削減などを検討する。

それではそもそもですが、会社全体として毎年いくらまでの投資をすべきなのか、年度毎の投資額の上限はどの程度にしいておくべきかについて述べたいと思います。

投資余力の算定方法

会社全体として合計でいくらまで投資してもいいかの投資額の上限のことを投資余力と呼びます。この投資余力の計算式は、企業によってさまざまかと思いますが、個人的に信じている算定式は、
投資余力=(調整後CF-長期借入1年内返済額)+借入余力です。

CFには営業CFやフリーキャッシュフロー、EBITDAなど色々な概念がありますが、多くの企業にとっては細かく計算していないのが一般的だと思います。そこで簡易的な計算式としては、
調整後CF = 当期純利益+減価償却費で計算するのがお勧めです。

ここでのポイントは収益こそが投資の原資であるとしている点です。売掛金の回収から買掛金の支払などを差し引いた営業収入を投資の原資であるといった主張もあるのですが、営業収入は運転資金見合いの借入の返済原資となるため、営業収入を投資の原資と見做した場合、短期借入が返済できなくなるリスクがあります。そのため営業収入ではなく、収益を軸に投資余力を検討するのがお勧めです。

また短期借入返済は上記で述べたように売掛金の回収などの営業収入を返済原資とする一方で、収益弁済の対象は長期借入です。したがって、長期借入の年度の返済額を調整後CFから差し引くと長期借入の返済も念頭に入れた投資余力の計算になります。

借入余力

次に借入余力の計算ですが、指標としては債務償還年数を指標とすべきです。債務償還年数の計算は、債務償還年数=収益返済借入÷調整後CFです。この債務償還年数の適正値は、5-10年の範囲内です。財務安全性という観点では数字が低ければ低いほど安定はしていますが、逆を言うと事業拡大に向けた積極的な投資を行っていないという見方もできますので、事業拡大という観点ではかならずしも数字が低ければいいというわけではありません。あくまでも財務の安全性と事業拡大の将来性とのバランスですので、ある程度リスクをとって事業を拡大するべきタイミングであれば10年でも問題ないと思いますので、10年になるように逆算して算出した数字が借入余力となります。

ちなみに収益返済借入の計算式は、収益返済借入=総借入-所要運転資金です。所要運転資金を差し引く理由は上記でも述べたように所要運転資金の返済原資はあくまでも営業収入だからです。日頃の売掛金の回収などは所要運転資金見合いの短期借入の弁済に充てられます。したがって当期純利益などの収益返済の対象となる借入は、総借入から所要運転資金を差し引いた金額となります。

まとめ

以上のように、年度の投資余力は、収益から長期的借入の当該年度の返済予定額を差し引いた後、借入余力分を足した数字となります。これが最大の投資余力の数字となります。

この投資余力金額を、成長性と収益性の軸でどの事業にどの程度投資をアロケーションするかを毎年検討し、事業毎の投資予算額を確定するのがあるべき姿です。

当然ながら投資枠を設定する際には、予め投資モニタリングプロセスや撤退プロセスまで含めて整備しておく必要があります。また投資予算が万が一予定通り使われなかった場合の次の使途が明確になっていない場合が多いため、その場合は借入返済に充当するなど、ここまで含めて整備しておくべきです。

本日は投資余力について述べましたが今後、投資モニタリングプロセスや撤退プロセスなども深掘りしたいと思います。

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