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桜の美しさは花ではなく、追憶。

この時期(春)になると各SNSは桜の写真で埋め尽くされ、テレビや各メディアでは桜前線のニュースが毎日のように流れている。

多くの人が吸い寄せられるように、限られた期間だけ咲き誇る桜を見に行くことになるだろうし、私自身も毎年のように早朝の誰もいない時間を狙って撮影に行きます。

(※ただ、このコロナ禍の中においては、多くの人が桜をみにいくという行動は変わってくると思いますし、変わらなければなりません)

なぜ桜は日本人をここまで惹きつけるのでしょうか?

日本で花見といえば多くの人が桜を連想し、日本人らしい花と言えば桜と多くの人がいうでしょう。

日本人にとって桜とは、他の花と一線を画した意味合いが強くあります。

そこに対する源流の考え方は人それぞれで、

桜は1年のうちでたった2週間だけ咲いて散っていくという姿に儚さを感じる。それが武士道の精神と近いのでは?という意見を持つ人もいれば、

眼前を覆い尽くさんばかりの見事な光景にただ心惹かれるという人もいます。

「お酒を楽しんで飲めるから」という人もいますし、

ただ単にそこら中に咲いているから。見る機会が多いだけ。

・・・と理由を上げる人もいると思います。

どれもいいことだと思います。

でも、私が思うに、日本人がわざわざ桜を見にいく習慣があるのには上記の内容を含有して余りある大事な追加要素があると考えています。

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日本人は、桜を見ることでその時期にあった思いや経験を記憶や心に刻み、同時に追憶して(思い出して偲んで)いるのです。

これはロマンチックな話ではなく、論理的な思考でこの価値を伝えていきます。

桜は都会では公園、地方では川沿いや山などにあり、日本のどこでも毎年咲き誇っているため、私たちは子供の頃から小学校、中学校、高校、大学、新生活、新社会人など、様々な出会いと別れと新たな生活を繰り返し、その人生の節目となる時期にふと見上げると、そこには桜が必ずと言っていいほどあったはずです。

桜が見事に咲き誇るのは1年のうちでたった1〜2週間だけですが、その期間は私たちの節目の時期であり、その大事な時期です。その時期に本にしおりを挟むように、私たちの生活の記憶に桜が咲き誇るがゆえに、桜という花と人生の記憶が同時に自然に刻まれていきます。

少し話は外れますが、初めて行った場所なのに、初めてじゃない気がする場所ってありますよね。初めて体験することなのに、なぜか同じような光景を見たような気がすることってごく稀にありませんか。

記憶というのはいつでも自由に引き出せるものではなく、何か関連するものをみて、それをトリガー(きっかけ)にして記憶を思い出すものです。

子供の頃に見た景色

何十年も前に経験した体験

それらを、似たような場所や空気感、体験によって追憶させるのです。

その追憶のトリガーこそが、日本人においては桜にあたると言えます。日本人は桜と共に記憶がひとつひとつと組み込まれていきます。

「あの年はこの人(たち)と一緒に桜の中を歩き、楽しんでいたな。」

とか

「あの年はとても、辛い思いで桜を見ていたな。」

とか

「あの年は、新生活と新天地で希望を持って桜を見ていたな。」

・・・のように、桜は日本のどこでも植えられていて、街中に出るだけで毎年のように見る機会があるからこそ、記憶を呼び起こしてくれます。

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桜自体は綺麗な花であることは間違いありませんが、「桜を見て感動する」という人は、若い人よりも沢山の人生を経験した人が多いように思います。

それは桜そのものの美しさだけではなく、その人が歩んできた積み重ねを桜を見た背景から思い起こしている。だから20歳の頃に見た桜は「綺麗」や、「見事!」という思いで見ていたれど、大人になって見る桜は複雑なまでに心が動かされる人が多いと思うのです。

その背景を考えると、「桜を見る感情」は人それぞれに強烈なまでの個性は出るはずです。

年齢、地域、見てきた場所

例えば3.11の震災で被災し、避難所で桜を見た人もいるだろうし、自粛ムードの中で桜を見た人もいるかもしれません。

それぞれが経てきた記憶や経験、出会いの深みが自然と毎年咲く桜へと刻まれ、投影されていく。

日本人にとっての桜の花見とは、そんな性質を持っているように思います。

そして2020年は新型コロナウィルス禍によって、家から桜を見る人もいるだろうし、実害を受けて特別な思いで桜を眺める人もいるのだろうと思います。

でも、そういう経験を経ることで、人は成長していきます。

今年見る桜が辛い人も多いとは思いますが、いつしか振り返った時に、きっとこの時期の辛さが良い思い出であったり、転換点になる人は多いはずです。

桜を見る目や思いさくらは歳と共に変化していきます。

辛い時期だからこそ、楽しくいきましょう。

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