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【242】本の話:「青の刀匠」天沢夏月さん 2024.9.22

 先日、図書館で借りた「青の刀匠」という本読み切りました。
 この本はジャンルで言うとヤングアダルト、ジュブナイルといった青少年向けの本です。
 私は精神的に幼稚なのか、大人向けのドロドロした本があまり好きになれず、図書館へ行ってもヤング向けの棚を漁って帰ってしまうことが多かったりします。

 この「青の刀匠」の主人公 沙(いさご)コテツ の両親は離婚しておりコテツは警察官の父親と二人で東京のアパートで暮らしていました。
 高校2年の夏休みの最後の日の8月31日の夜中12時過ぎ、アパートに火災が発生し、眠り込んでいたコテツは逃げ遅れて火に巻かれ、もう駄目だというところに、朝、父子喧嘩をして別れたまま仕事から戻っていなかった父親が飛び込んできて猛火の中をコテツを背中に負って救い出してくれたのです。
 しかし父親はアパートにもう一人小さな子供が残っているということを知ると、コテツをひとに託し、業火の中に戻り、その子を助け出してくるのですが自身は火傷による大怪我のために植物人間状態になってしまい、意識が戻らないまま入院してしまう。
 コテツ自体も背中から顔の左側にかけてひどい火傷を負ってしまい、引き取ってくれた叔母のところで2学期の間は学校を休んで療養したあと、島根に住む遠縁の剱田かがりという老女に引き取られることになるのでした。

 人里から離れた山の中に仕事場を構えて住む 剱田かがり は実は日本で唯一の女性刀鍛冶でした。
 顔に残る火傷あとへのコンプレックスや火事の時に受けた炎への恐怖などから人前に出るのを恐れ、登校拒否になってしまったコテツに、かがりは学校に行かないのなら、仕事を手伝え、という。

 仕方なくコテツはかがりの刀作りを手伝うことになるのですが、刀作りは地道で大変な作業の連続で、興味もモチベーションもなく、ひとつひとつの作業の意味も知らずにいやいや言われたままに手伝っているだけのコテツは様々な失敗をして足を引っ張ってしまう。
 
 仕事場には一番弟子の横山こう、2番弟子のカンナさんという二人の弟子がいて、それぞれ個性の違う二人の先輩に学びながらコテツは、一つの仕事が後の工程にどのように影響するのかということを知り、真剣に作業に取り組むようになって少しずつ成長していく。

 今の世の中に、刀という凶器を作る意味はあるのか? 美術品だというのならば刃引きでいいのではないか? 
 コテツ、コウ、カンナ、そしてかがりさん自身も、誰もがこの問題に直面し、悩んでいます。その中で、それぞれがどう答えを出すのかも、この本の中での1つの大きなテーマになっています。

 中盤までは展開が遅く、早く終わらないかなと、少しイライラしながらページをめくっていたのですが、終盤にかけて物語は怒涛の展開を見せて盛り上がり、ラストへとなだれ込んでいきます。

 後半はこれからどうなるのかと、本を置くことができずに一気に読み切ってしまいました。

 先日岩合さんの写真展を見た佐野美術館は刀剣の常設展示もしており、 最近刀について興味を持つことがあったりしたので、そうした面でも興味深く読むことができました。

 この本は、多分超ベストセラーになるという事はないでしょう。けれど、読んで面白く、読んだ人が勇気付けられるよい本だと思います。お薦めです。

 やはり私はジュブナイルの方が好きだなあと思いました。

 ちょっと調べて見たら試し読みができるようですので、興味を持った方はどうぞ。

 

 

  


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