【42】電気自動車化の問題点:真剣に怖い話 2022.7.1

電気自動車が無公害だなんて正気なの?使う電気はどこから来るの?

1)南の島の王様
 昔どこかで読んだか聞いたかした話ですが、南の島かどこかの王様が来日して東京のホテルに宿泊し帰国のために出発しようとするとき、「どうしても欲しいものがあるのだが、売ってくれないか。」といったというのです。
一体何が欲しかったと思いますか?
その答えは水道の「蛇口」でした。
コックを捻ればきれいな水があふれ出てくる、こんなにも有難いものがあるだろうか!
国に持って帰りたいという王様の気持ちはよくわかります。
けれどホテル側は困ってしまいました。蛇口だけで済むことではなく、その後ろには延々とダムまで続く上水道が必要だからです。
さて、この王様のことをどう思いましたか?
 とても優しい国民想いの王様だ。かわいい、純粋、とかいう意見もあるでしょうが、「蛇口さえあれば水が出てくるなんて、そんな魔法みたいなことある訳ないやないか。ちょっと考えればわかるやろ、アホやなあ!」と笑うというのが失礼ながら正直な反応ではないでしょうか。
 けれど皆さんはこの王様を笑う資格が本当にありますか?

2)電気自動車が脱炭素で無公害だなんて正気か? 「電気自動車は炭酸ガスも硫化物も一切出さない無公害の乗り物だ。」
 「炭酸ガスを排出し地球を温暖化させるガソリン車(軽油車も)は一刻も早く根絶し、すべて電気自動車に置き換えるべきだ。」
 今、全世界がこのように大合唱して、何年以内にそれを実現するのか多くの国が集まって論議しています。
皆さんもその通りだ。早く電気自動車に変えるべきだ、と思っていませんか?
 この流れに乗って、電気自動車の会社テスラの株価は2019年から2021年までの2年間で20倍に跳ね上がりイーロン・マスク氏は大富豪に成上りました。
 しかし、ちょっとだけ考えてみてください。
「電気自動車の電気はどうやって充電するのでしょうか?」
→「コンセントに差し込めばいいだろ。家でも寝てる間に充電出来るし、実に便利だ。」
「出先ではどうしますか?」
→「確かに充電ステーションが不足しているのは事実だ、でも電気自動車が増えればステーションも増える。俺は心配してないよ。」
なるほど、一応よさそうですね。では、もうちょっとだけ深く質問しましょう。
「コンセントに挿しさえすれば電気は出てくるのですか?」
 そう思っていたらさっきの王様と同じです。
言うまでもないことですが、コンセントの後ろには延々と電線が発電所までつながっているから電気が出てくるのですよね。
では発電所はどうやって電気をつくっているのですか?
詳しくは下のサイトにありますが、2020年度の日本の発電量は、石油、天然ガス、石炭による火力発電が76.3%、水力や太陽光、風力などの再生可能エネルギーが19.8%、原子力が3.9%となっています。
 https://earthene.com/media/156
つまるところ電気自動車といっても、その電気を作るためには化石燃料が燃やされているのです。
ガソリン車と電気自動車の違いは、車の中で燃やすか発電所で燃やすかだけであって、電気自動車が脱炭素で無公害だなどというのは誰か考えたってわかるはずの大嘘なのだということです。
 水素自動車にすれば燃やしても水しか出ないから無公害だ、という神話も同じです。燃料とする水素は主に水を電気分解することで作られます。その際には電気が必要、電気をつくるためには化石燃料を燃やすのですから脱炭素でもないし無公害でもないのです。
 結局のところ、何もないところからエネルギーが生まれるわけはないのです。そして大本の発電での化石燃料を減らすことができなければ電気自動車も水素自動車も、脱炭素のための本質的な解決策には成り得ないのです。
 世の中の政治家、マスコミ、学者やいわゆる知識人や評論家等、頭の良い人はうじゃうじゃいるはずなのに、なぜこんな簡単なことに騙されて、目を瞑って電気自動車に向けて突っ走っているのでしょう? 
 どこかのだれかが利権を独占するために情報統制をしているのでしょうか? そういえばイーロン・マスク氏はツイッターを買収してしまいましたね。世の中はどこに向かっているのでしょう。
 ものすごく怖い気がします。

3)さらに怖い話:電気自動車に使う電気はどうする気なの?
 さらに、怖い話をします。
今の日本の発電量は十分余裕がある状態でしょうか?
 そうではないですよね。この所の猛暑で電力は逼迫し、予備電力は5%を切り、何か事故でもあればパンクは必至で、連日節電要請が出ているという今の状況はTV,新聞などで皆ご存知ですよね。ウクライナ情勢もあって原油の供給が不安定となり、各国が奪い合い価格は急上昇し、日本は毎日膨大な貿易赤字を計上し、物価も上昇がとどまるところを知らないという現在の厳しい状況は皆さんいやというほど認識されていますよね。
 この状況の中で、もしガソリン(軽油)車が全部電気自動車に移行したらどうなるのですか。その電気はどこから湧いて出てくれるのですか?
 ガソリンや軽油で賄っていた分は、発電量を増やさなければならないのですよ!
 当たり前ですよね。
 コンセントに差し込めば無尽蔵に電気が出てくるのではないのです。消費量に応じた発電設備を整備しなければ電気は不足し、大規模停電が起き、私たちの生活は崩壊してしまうのです。
 ガソリン(軽油)車がすべて電気車に置き換わったら、どのくらいの発電量が新たに必要になるのか?逆に言うと、このままいったらどれだけ電力は不足するのか?ちょっと計算してみました。
 電気自動車リーフは電費が6km/kWh位だといいます。
https://www.smauto.co.jp/idemitsu-autoflat/my-car/20190806_001140.html
 リーフクラスのガソリン車の燃費が12km/ℓ程度とすると、ガソリン1ℓ当たりのエネルギーは電力に換算すると、2kWh、また、軽油(ディーゼル)車の燃費はガソリン車よりもよく15km/ℓ位のようですから1ℓ当たり2.5kWhということになります。
 日本の車両用燃料の年間消費量は2018年度では概ねガソリン5200万kℓ、軽油3200万kℓになっていますからこれを電気に換算すると1840億kWhに相当する計算になります。
 つまり、今はガソリンや軽油で賄われている自動車の燃料を電気に置き換えるためには、新たに1840億kWh余分に発電しなければならないのです。これは、今の日本の総発電量が約10000億kWhですからその18.4%に当たります。
 これがどのくらい大変かというと、100万kWの発電機を1年間フルに連続稼働させたとして88億kWhですからこのクラスの発電機を21基増設しなければならないのだということです。
 なのに、政府が、電気自動車化と並行して、その分、発電量を増やす方策を考えているといった報道は見たことがありません。
 コンセントに挿せば電気がいくらでも湧き出てくる、そう思い込んでいるとしか考えられないのです。
 皆思考停止をしている、皆南の島の王様なのです。
どうなってしまっているのでしょうか。

4)余ったガソリンや軽油はどうするのですか?
 さらに不透明で不可解なのは、
「自動車がガソリンや軽油を使わなくなったとき、余ったこれらをどうするつもりなのだろう?」
という問題です。
「原油の輸入量を減らせばいいだろう」ですか?
そうはいきません。
 原油は重い成分の重油などを発電などに回し、軽いガソリンや軽油が自動車に使われています。
 ですからガソリンを減らしたからといって火力発電所で使う重油まで減らせるわけではなく、発電量を維持するためには原油輸入量は維持せざるを得ないのです。
 そして、電気自動車の分の発電量を増やすのであれば、そのための原油量は増やさねばならず、さらに多くのガソリン、軽油が余ることになります。
 ならば、車で使わなかったガソリンや軽油を発電に回せばいいじゃないか。理屈はそうです。そうすればそれで計算上電力量は賄えるはずです。
 けれどそれでは、自動車で燃やしていたのを火力発電所で燃やすことにしただけですよね。化石燃料使用量や炭素発生量については本質的に変わりません。
 また今の火力発電はガソリンや軽油に対応していませんから、そのような成分に対応した発電所は今から新たに研究開発しなければならず、100万kWの発電機21基を増設しなければならないことも変わりません。

5)それでも電気自動車化を進める気なの?
 発電所の増設はしない。電気自動車化は進めますでは日本は破局の道をまっしぐらです。
 到底信じられないのですが、政府はすでにもう「欧州にならい、日本でも2035年までに新車販売を電動車のみにすると発表!」してしまっているのです。
 それなのに、電気自動車の電気量をどうまかなうのか、その説明は今までの所一切聞いたことがありませんし、マスコミでもその問題を取り上げているのを見たことがありません。
 日本は(世界も)一体どうなってしまっているのでしょう?

6)まとめ
 長くなりすぎるので一旦筆をおきます。
言いたかったことは、
1)電気自動車は脱炭素なんて嘘っぱちだ。
2)電気自動車の電気、1840億kWh/年はどうやって増設するのか?
3)余ったガソリン、軽油はどうするつもりなのか?

の極めて単純な3点です。
 この3点について、政府でもそのバックにいるはずの学者、知識人、シンクタンク、それを何ら問題視せずに受け入れている(というより積極的に旗を振っている)マスコミ諸兄、誰でもいいですから、どうするつもりでいるのか明確な回答をください。
 私の試算はネットで探した情報を基にちょこちょこと計算しただけのもので誤差は当然あると思います。
専門家の方が精査していただき、何の心配もいらないと証拠を見せていただけたらどんなにか嬉しいかと思います。

7)補足1:石油は発電所で燃やす方が効率がよいという意見について
 「石油は車で個々に燃やすより、発電所で集中的に燃やす方がエネルギー効率がよく石油消費量を減らせるし公害対策もしやすいのだ。」という意見を見かけました。
 本当に効率が上がり消費量が減るのかはきちんとした計算が必要と思いますが、本質的に脱炭素には成り得ないことは前述したとおりです。また、自動車の電気量を賄うために発電所を新たに増設しなければならないこと、ガソリン、軽油による発電所の開発をしなければならないことは変わらず、なんら有効な回答には成り得ないと思うのです。

8)補足2:電気自動車の燃費はすごく安くてお得だぞ!
 現在1kWhの電気代は約25円くらいです。先ほど書いたようにリーフが6km/kWhとすると10km走って42円ですが、ガソリン車だと133円位かかりますから確かにとても安い燃費だということになります。            *といっても燃費は車種の違いが大きく、私の乗っているハイブリッドの小型車なら条件の良い通勤路ですが公道で24km/ℓくらい実際に走りますから、10kmなら67円。そして今気づいたことですが、電気自動車の電気にはガソリン税がかからないのですね。ガソリン税54円/ℓがなければ、10kmを44円で走ることになり、電動車との実質的な差はほとんどなくなります。そうなると電動車はガソリン税を払わないから燃費が安いのだということになり、先に述べたように環境負荷が軽い訳でもないのに、税を払わないということを皆が知ったら不公平ではないかと不満が爆発しそうですね。

いずれにしても、電動、石油車を問わず、省エネの余地はまだまだありそうで、大型車に一人で乗るなどの無駄をせず、燃費の良い省エネ車に乗ること、可能なら電車を使うなどすること、車にとどまらず、世界中が省エネを徹底することがまず何よりも先にやるべきことで、この分野では日本は貢献できる高い技術を持っており、世界にアピールすべきものだと思うのですが。   

 電気が安いと言っても、こんなに安い電気代がいつまで続くのでしょうか? 今後発電所を新規に建設しなければならない、ステーション網を整備するなどなったら、今の電気代が維持され続けるなんてことは考えられません。
 この点についても将来的長期的な展望を示してほしいのです。

9)補足3:唯一の解決法があるにはあるが?
 イヤらしい茶々が入りそうなので書きたくないのですが、この件を調べていたら現実的な解決策が一つだけあることに気付いてしまいましたので一応書きます。
 現在の日本の原発の設備利用率は2020年度は15.5%で450億kWhの発電量になっています。
 ですので、この利用率を76%まで引き上げれば新規の設備投資は無しで1840億kWh発電量をUPさせることは可能という計算になります。(再稼働にも巨額の費用はかかるのでしょうが。)
https://www.fepc.or.jp/nuclear/state/setsubi/index.html
 誤解しないで欲しいのは、私が原発大好き人間で、結論をここに持ってこようとしてこのような文章を書いてきたのではありませんよ。
 電気自動車化を脳内花盛りで無責任に推進しようとしている方々が、私が提起した問題をどう解決するつもりなのか明確な解決法も示さずにそのようなことを言ってきたら本気で怒りますよ。
 真剣に考えてください。原発の問題も気づいてしまったから書きましたが、「他に代案があるなら出してくれ!」です。私は原発推進派ではありませんが、感情的に最初から選択肢から外してしまうのも正しくないとは思っています。
 今の生活水準は落としたくない、けれど原発はイヤだでは済まされない状況が発生していることも見ないふりではすまされないのではないでしょうか?
 
 10)終わりに
  産業革命というと肯定的にとらえている人が多いようですが、文明論的にいうと、人類が滅亡へ踏み出した第1歩こそが 産業革命であったと私は思っています。
 それ以前の主要な燃料は木材でした。木材は植物が光合成によって作り出すものです。人は基本的に再生可能なエネルギーだけで暮らしていたのです。
 産業革命を機に ヨーロッパでは 石炭や石油 といった化石燃料の大量使用が始まります。 石炭や石油というのは遠い過去の太陽エネルギーによって作られたエネルギーの缶詰です。 要するに人類はこの時点から、先祖の遺産を湯水のように蕩尽し自分の稼ぎをはるかに越えた分不相応な贅沢暮らしを始めてしまったのです。親の遺産を独り占めしようと兄弟が我先にと奪い合い、争い、戦ってきたのです。
 こんな暮らしがいつまで続けられるのか、どこかで破綻するのはあたりまえではなかったのでしょうか。
 再生可能エネルギーで養える地球の人口は何人なのか。
人口を制限し、生活水準を抑え、資源を再生し循環し分け合って生きることができたならと思います。江戸時代は約2500万人の人がいて最初から最後まで人口はほとんどかわっていないのだそうです。江戸時代の人たちは再生可能エネルギーだけでやっており、その中でとても幸福度高く暮らしていたそうです。

 私は、今の技術力をうまく使えば日本は5000万人位は十分養っていけるのではないかと思っています。

 ただ今の時代、日本だけがそうして幸せに暮らしていても各国がエゴをむき出しにする現状においては、ある日外国から侵入蹂躙されておしまいでしょう。

 この先の日本そして地球及び人類について考えるとペシミスティックにならざるを得ないのがほんとうに恐ろしいと思います。

2022.7.1

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