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グループ会社決裁を上意下達でないものとして考えたい

グループ会社と親会社間で、親会社から方針が降りてきて、グループ会社はその方針に従うという形をとっていることがあると思います。その場合、基本的には親会社が大きい権限を持っていて、それがグループ会社側では次第に絞られていく、というように作られていることが多いと思います。

なのですが、ここを上位下達でない、少しひねりが入ったものにしてみたい。

例えば、「職務権限表」というものがあります。
金額基準だったり、何か対予算比率だったり、ある程度の決裁権限を設定して、職務に紐づいている表、をつくるものです。部長であれば●●万円、本部長であれば●●●万円、取締役であれば●●●●万円みたいなことですね。
このように機械的に金額で権限を分けていくという発想に対して思うのは、
仕事において、まずは目的があり、その目的に沿って資源が配分されるべきだけど、なぜ部長の決裁権限は●●万円とあらかじめ配分できるのだろうか、を疑問に思います。
もちろん、仕事の目的がそれほど揺れ動かないのであれば、先に決めておくことはできそうなのですが、投資の目的が案件ごとに違ったり、組成された案件での自社とパートナーの役割が違う場合、そこは多様になるのでは?とも思います。
特に、私のいる会社では親会社とグループ会社で上意下達な関係性を作りたいという意思はそれほどなくて、どちらかというとフラットにしたいという意向が強いです。

こうした価値観を表現する方法は何かないだろうか、と思っていた時に、私の会社に複業として関わっていただいている大橋さんから、『全社戦略』という本を一緒に読みましょう、と言っていただきました。

そこに、「提携における課題と成功要因」を書いてある箇所(p.212-214)があり、これかもしれないな!と思いました。対等な提携関係から、学べることがありそう。

企業の提携はM&A以上に難しく失敗することが多いことがわかっています。(M&Aで成功するのは半分以下、提携に至っては3割ぐらい。7割は失敗しているそうです。)

提携の失敗を避けるために以下のような取り組み事例が示されています。(他にも提携の成功要因はあるので、ご興味ある方は同書をご参考ください。)

  • 問題を避けようとして詳細な提携契約を結ぼうとすることは解決につながらないことが多い。(本の中では「コントロール条項」と呼ばれています。)権利と義務を細かく定義したり、分担や分配について定めたり紛争の解決方法を定めることで、義務の不履行による一方の当事者の搾取行為を制限しようとする。この手法はあまり有効でない。

  • 提携パートナー間の関係性を定義したり、協調を支援する提携契約は提携のパフォーマンスを良くする。(こちらは「コーディネーション条項」と呼ばれています。)提携における優先事項を整理し、公式なコミュニケーションとレポーティングの指針を提供することで、提携パートナー双方の期待を収斂させることが目的。

つまり、2社間でどんな目的を持つのか、それぞれはどんな役割で何を目指すのか、調整が必要になったらどんな方法でその調整を行うのか、これをあらかじめ決めておきましょう、ということだと思います。
「期待を収斂させる仕組み」を整えない限り、自然と期待が収斂することはない、という設計思想があるのだなと思いました。

今までは、ビジネスモデルがある程度見えていれば一緒に仕事をしたらできるでしょう、と思いがちだった。でも、最近は、世界的にも「期待を収斂させる」のは難しい経営環境にある、と認識が変わっているのかもしれません。

都度都度、変わりゆく環境に合わせて関係するたくさんの人々の「期待を変化させ、収斂させていく」仕組みを整える。そこに職務権限表を連動させてれば、より納得感のあるものが作れそう。

そして、基本的には全社戦略の策定の中でこの考え方をつくっていけば、そんなに不可能な話でもないのかなと思いました。(大変だと思いますが…。)
まだ、こうするとできます!と私が言い切れるわけではないのですが、職務権限表ありきではないのでは?の疑問に対して、自分なりの考え方ができそうだなと思えたので、書きました!

また、個人的な感想ではありますが、私は常々「裁量が欲しい」とか「権限が与えられていない」という言葉が社会人の中では言われている気がしていて、その意味がよくわからないという悩みがあったのですが、少しだけその答えが得られた気もしました。
そもそも人間に対して何かの裁量を与えるなどがあり得るのだろうかという疑問があります。意思を持った人に対して、プログラムのように権限を開けたり閉じたりみたいなことがそもそもできないのでは?という感じがしていました。
そこに「2者の違いを前提とした共通の目的」を置くことでお互いに対話し続ける構造を作る。その後で、構造の健全性を測るためのモニタリングをどう組織的に作っていく。その組織化の一つの方法として「コーディネーション条項」という実践例があるんだな!というのが、私の学びでした。

内部統制周りやグループガバナンス周りで、こんなことがそういえばわからない…みたいなことを、もし思った方がいましたら、ぜひお話してみたいです。
先日も、このnoteきっかけで、ご連絡いただいてお話をオンラインですることになりました。
お気軽にご連絡いただけると嬉しいですし、できれば複業的にご一緒できたらもっと楽しいなと思っています!!


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