こどくなうた

「こ」である私は
いつも
こどくだった

想いは
とどく
誰かへ
とどく
そう叫んでいた

「こ」(そ)「と」
幼いころ習った五十音表
仲良く近くに並んでいた
こどくな私はいつだって戸を開け放ち
想いをとどかせることができると信じていた

「こ」「そと」
その間には途轍もない隔絶
こどくな私にとって
外は遠く遠く
ましてや
誰かになんて
とどかない

泥のような微睡みの最中
外から叫びにも似た歌が聴こえた

いつかとどかせるから
いつかたどり着くから

存在の証明を叫ぶような歌
それだけで
私には十分だった

「こそ」「と」
こどくだから
こそ
とどかないから
こそ
私たちは
戸へ手を伸ばすのだ

想いをとどかせるから
孤独なあなたにたどり着くから

こどくだから
こそ
そとへ
とどく

そう叫ぶんだ