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毎月短歌10『好きな短歌を「いう人」』企画に参加して

毎月短歌の「選者の方以外でも投稿作で良いと思った短歌を発信して、感想や評を書こう!」という『好きな短歌を「いう人」』企画に参加してみたので、これからnoteに綴っていこうと思います。

毎月短歌10「自由詠」「四月の自選」部門から、私が個人的に好きな短歌を三首ずつ引いて、短い評を書かせていただきました。
選ぶ時は作者の名前を隠し、評を書いた後に初めて作者の名前を見ています。
ちなみに引いた三首には特に順位づけはありません。どの短歌も等しく「好き!」と思った三首です。

まずは「自由詠」部門から。

泣いたって仕方がないと知った子の瞳の奥の永久凍土/藤平 怜さん
子は周囲に愛や助けを求めるもの。しかしそれらが得られないと悟った時、大人たちや世界をある意味見限り、外界に心理的バリアをはってしまう。
その瞬間の虚無感と絶望を三十一文字で描き切った真に迫ってくる一首だと思います。

おみくじのようにあなたと引き抜けばどっちも春のいちごポッキー/哲々さん
おみくじのように何を引き抜いたのだろう・・・と読み進めていくと「いちごポッキー」!
この結句が目に飛び込んだ瞬間、春のピンク色の風が花吹雪とともにふわっと巻き起こるような鮮烈さを感じました。詠む人によって主体と「あなた」のイメージはそれぞれだと思いますが、私は高校生が放課後に教室でこっそりお菓子を分け合って食べているような青春のきらめきを思い浮かべました。

銃口に綿毛いっぱいつめこんだ 撃てば世界を覆うたんぽぽ/浅黄かな恵さん
「銃口」という言葉が含む硬質な冷たさに感じた不穏さが一転、下の句で一気に世界を祝福するかのようなやわらかなイメージに変わるのが鮮やか。
「世界を覆うたんぽぽ」というメルヘンな景が素敵だと思いました。ファンタジー・ストーリーのエンディングみたいな美しさ。

続いて「四月の自選部門」です。

空色のスモッグを着た子どもらが春一番のむささびになる/水川怜さん
園児の着るスモッグってダブッとしてて、確かにむささびみたいですよね。
きっと風をうけて脇の方から裾にかけて空気をいっぱいに包み込みながら、元気に走り回っているんだろうなという微笑ましい景が浮かびます。

干からびた流木をそっと抱きあげる見てきたものをたずねるように/奥かすみさん
このお歌はどこか荒涼とした物寂しさを感じさせつつ、「そっと抱きあげる」に含まれたやさしさが「救い」のようで胸に迫りました。
様々な経験を経て老いてくたびれた人に、静かに寄り添って話を聞いてあげる人の姿が思い浮かびます。

両の手を合わせてつくったチューリップ開いてみせた ただあなただけ/水の眠りさん
手で形作ったチューリップを開くという仕草が微笑ましく、同時に秘めやかなムードも感じます。
たった一人の大事な人に自分の秘密、もしくは心の奥底の気持ちを打ち明けるお歌なのかなと思いました。

以上になります。お読みいただきありがとうございました。




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