マイナス金利解除は時期尚早ーデフレからの完全脱却と安定的な賃上げのために積極財政を
日銀が「マイナス金利政策」解除で金利引き上げを決定しました。しかしこれは時期尚早です。
春闘で賃上げ率が33年ぶりに5%を超える見通しとは言え、定期昇給分を除けば3%台。実質賃金は21カ月連続マイナスで個人消費も低迷、GDPギャップもマイナス0.6%です。賃上げや政府支出が不十分ななか金利を引き上げると、消費や投資を冷え込ませ、再びデフレに逆戻りする可能性もあります。
お金を借りて設備投資や仕入れを行っている中小零細企業は、返済が苦しくなり、倒産や廃業に追い込まれ、失業者が増える懸念もあります。また、家を購入しようと思っていた人たちも、返済額が増えるため躊躇するでしょう。
帝国データバンクの調査では、2024年2月の企業倒産は734件で、2月としては過去10年で最多。『不況型倒産』は22カ月連続で前年同月を上回っています。中小零細企業にとっては、まだまだ厳しい状況が続いているということです。
また東京商工リサーチの調査では、金利が0.5%上昇すれば、企業の2割が借り入れを「断念する」と回答しており、金利の上昇が投資に与える影響が大きいことが分かります。
デフレからの脱却はまだ途上であり、賃上げはここ数年の物価上昇に追いついていません。
植田総裁は、就任前の国会質疑で「安定的・継続的な賃上げが先、金利を引き上げるのはそのあと」だと明言しました。しかし、3月20日のマイナス金利解除という大きな方針転換を発表する会見では、「中小企業の賃金がある程度以上上がるという根拠はない」と発言しており、当初の方針はどこへ行ったのか、と残念に思いました。中小零細企業が安心して投資や賃上げできる状況になるまで、そしてデフレからの完全脱却と、物価上昇を超える安定的な賃上げが確認できるまでは、金融緩和を継続するべきでした。
金融政策は大きな転換点を迎えました。今後、デフレから完全脱却できるか、物価上昇以上の安定的な賃上げを実現できるかには、財政政策がさらに重要になります。金融引き締めに歩を合わせて、緊縮財政を行うと、デフレに逆戻りし、「失われた30年」が「失われた50年」になるでしょう。
今こそ、消費税廃止を含む積極財政が必要です。
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