uikeda

顔を匿すと沢山喋れます。

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最近の記事

「手」

「手」 あぁ、この手はあの人の手なのだと 小さな温もりがわが手に伝う あぁ、この手はあの人の手なのだと 引かれる腕にアスファルトが揺れる あぁ、この手はあの人の手なのだと 傾きながら小走りに向かう あぁ、この道を歩んだ記憶よ 紡ぐ命の尊さよ 薄くなったその手にわが手を重ね 思い巡らすこの時に また陽が昇るのを待つばかり。 #詩

    • 偉大なるお弁当

       この度、最愛なる妻の育児休業休暇満了に伴い、我が家は当初より予定していたとおり「共働き」が再開されました。同時に、愛娘は1歳を迎える前に保育園に通い始め、早々と社会生活の第一歩を踏み出したのです。つまり、妻と娘の「当たり前」にあった尊く、過敏なくらい濃密な時間は「経済的事由」にて完全に剥離され、子育てに費やす時間を十分に確保できない日常生活の中で、今後の日々のルーティンについて夜な夜なブラックモンブランを食べながら話し合っていると、あーだこーだ云う訳ですよ、当然に。離乳食の

      • フェデリーニは踊る。

        ≪フェデリーニは踊る、たくさんの気泡たちと手を取って。フェデリーニは詠う、早く彼らに逢いたいと。フェデリーニは揺らぐ、此処には誰もいないのに。フェデリーニは憂う、本当に私でよかったのかと。≫ 指名を受けたときには驚いた。それは全くの筋違いというか、そもそも私なんかにその役回りが巡ってくるなんて、これからこの世界で生きていける自信がなくなるくらい、とても不安になった。 たとえば、とても清楚で笑顔が素敵なあの子は、実はすね毛を剃るのが大の苦手で脱毛とか行きたいけどまだ行けれて

        • 「住めば都」に還るために。

          21時を過ぎると照明を落としたい。それまで照らしていてくれたリビングの照明を、そっと落としていきたい。誰にも気づかれないくらいゆっくりと、慎重に、知らない間にほの暗くなっている。そんな落とし方が理想だ。人はそうして一日の終焉に向けて、心のトーンをも落としてゆく。 一度、天井がもの凄く高いマンションを借りたことがある。3階建ての3階部分で、上の階がない分天井が高い。おそらく5メートル以上あったと思う。明り取りの窓がポツンとついていて、照明の設置するために差し込むコンセントのよ

        「手」

          「ありあまる地上の憂鬱とよろこび」と転校生だった頃の僕。

          ちょうど不安定な時期だったのだと思う。思春期の初期みたいなタイミングで、自我は7分咲き、もうすぐ中学校に進学するという頃に転校の話が降って湧いた。ミレニアムイヤー。2000年だった。 その転校の話は僕の反対がどれだけ効果があったのかは分からないけれど、一旦は鎮火しかけた。しかし進学後3ヶ月を経過してから再燃し、その後1ヶ月間延焼した結果、やはり焼尽し、僕はあっけなく福岡へ転居させられた。 9月7日、今でもはっきりと覚えている。廊下ですれ違う生徒たちや校舎の匂い、耳に入る方

          「ありあまる地上の憂鬱とよろこび」と転校生だった頃の僕。