2002 フットボールアワー

 完全に勝ちにきている。そう感じた。ネタ所要時間、4:34、最初の笑いまでの所要時間、8.40秒。ツカミ、なし。前年は岩尾(ボケ)イジりを中心としたネタを展開していたが、当年はそれを残しつつ、ボケの鼻につく感じを巧みに生かしたネタであった。松本人志も、今大会史上最高得点(当時)の、85点をつけている。
 フットボールアワーのネタは、言葉遊びから発展して生まれたものが多い。「男らしくしろ」→「どうやら俺は男らしい、おかんによると」など、日本語の面白さを一番活かしていたのがこの漫才。とにかく美しい。ワードのはめ方も完璧である。ファミレスでハンバーグ定食の注文を復唱するときに、「おっぱいのことを考えながら」繰り返し、「もんで」(本来「そんで」が入るところ)と続ける。この下は鳥肌ものだ(ハンバーグに鶏肉は使われないが)。おっぱいを揉むのと、ハンバーグの生地をもむのと、言葉遊びをこれほど完璧に織り交ぜたものは今までに見たことがない。しかも、これを普通のボケのように言うところがまた恐ろしい。これだけ器用なことをしながらも、しっかりと一貫した「気持ち悪さ」を演じている岩尾のテクニックたるや。技術があるのにそれを感じさせない表現で、もはや天才的な芸風である。
 これはファミレスネタの教科書、聖書、いや、完成形なのかもしれない。とにかく全てが完璧で、語り尽くせないが全て面白い。

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