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明日は雨が降るらしいよ

8月最後の金曜日の夜だった。
彼が泊まりにきた。
土曜日も遊ぶ予定だったのに、金曜日も会いにきてくれた。

いや、違う。
ただセックスしにきただけなんだけど。

土曜日は彼と祭りに行こうと話していた。
乗り気じゃない彼。



いつも会うのは決まって彼の家。
いつも会うのは夜から朝方にかけて。

自分の家からタクシーで彼の家まで行く。
事を済ませたらまたタクシーに乗って家に帰る。
彼の家に自分の荷物なんて置かないし、彼の家でお風呂に入ってゆっくりすることもない。
ただソファとベッドを往復するだけ。


時々私の家に来てくれる。
事を済ませたら彼は帰るけれど。
余韻なんてなく。


そんな彼と祭りにいけるなんて、なんというか。
何を話せばいいか分からない。
彼とセックス以外なにをしたらいいか分からない。
でも嬉しかった。
私のことを人間として見てくれているようで嬉しかった。


今年は夏らしいことが何も出来なかった。
浴衣を着て行こうと思って準備していた。


夏が終わる頃きっと私たちの関係も終わるだろう。
終わらせなければならない。
そう思ってもいた。



結局、祭りには行かなかった。
彼は体調が優れないからやめようと言った。
またそう言うんだね。


思い出も何もないまま今年の夏が終わった。
土曜日はちゃんと雨が降った。
雷も鳴った。
祭りどころじゃない天気だった。
私たちの運命は決まっていた。


そうだ。
私たちはいつもタイミングが悪い。


浴衣を着て祭りに行きたかったな。
上辺だけの可愛いでも嬉しいんだよ?


来年の夏は私のことを心から可愛いと言う男の人と一緒にいるね。


さよなら今年の夏
さよなら、今年の夏の思い出
さよなら、過去の男


早く思い出が美化されますように。


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