チンコケースの話 その2
前回までのおはなし↓
パリの陽に染まるチンコケース
「チンコケースに赤を入れよう」
マルセイユの宮殿で、王子が言った。
やはりチンコケースは伝統があるとはいえ、パリジェンヌの目のにはただの竹筒なので、なかなか目を引くことができない。注目されることがあるすれば、庭にゴーヤを植えたい時くらいだ。
そこで鮮やかな赤色をチンコケースに塗り込むことにより、華やかさを出そうとの提案だった。
それに職人たちの一部が、反対の声を上げた。
「チンコケースは、竹の筋目を美しさを、どう細工に活かすか。そこに技術が問われるんだ。赤く塗ってしまったら、それはもはやチンコケースではなく、ガンプラのシャアザクを作った後にいっぱい残る、赤いプラスチックの棒じゃないか」
「あのガンプラゴミは、正式名称ランナーって呼ぶんです」
王子の傍らで聞いていた、新人メイドが口を挟んだ。
「小娘はだまってろ、東方からの骨董品みたいな顔しやがって!」と、職人たちから罵声が飛んだ。
しかし、のちに彼女が立派なチンコケースを作り上げ、職人たちの仲間入りすることを、まだ皆は知らない。
「でも赤は今、フランス社交界では大流行の色なんですよ。ボク、ファッションとかくわしいので」
と、金髪をなびかせながら、シラトンが言った。
まわりは聞こえないふりをした。
「でも赤は今、フランス社交界で大流行の色なんですよ。私、ファッションとかくわしいので」
と、乳房を揺らしながら、ミヤマーリが言った。
まわりは声をそろえ「じゃあ赤くしよう」「異議なし」と、2秒で赤入りが決定された。
「それと、やはり裸はまずいと思う」
スーツに姿にチンコケースの王子が言った。
たとえ裸で腕組みポーズが、ジャングルの伝統とはいえ。大都会のパリでチンコケースの下、ふぐりを風に揺らして歩くのは、いかがなものか。
あの大きなエッフェル塔にだって、ふぐりはぶら下がっていない。
「裸でいいじゃないですか」
ワインをすすりながら、中年のベテラン職人、眼鏡のコンドリアがそう言った。彼は「感覚派」というジャンルでチンコケースの世界に新しい風を吹かせ、ふぐりを揺らし、結果(もはやチンコケースがないことすら、チンコケースではないのか)という幾何学的な解答を得て、いまや完全な全裸である。
「いいわけないだろう」
王子が真顔で言った。
そこに職人集団のリーダー、タカハールが大声で
「じゃあさ!じゃあさ! 上にパーカー着るのはどう!?」
と、大声で叫んだ。
「下半身の話をしてるのだ」
王子が真顔で言った。
「ふんどしはどうだろう。ジャパニーズ・フンドシ。そして女性は加えて、サラシを胸に巻けばいい」
最年長の老職人・ユーダイアが静かにつぶやいた。
男性全員が宮沢りえカレンダーを思い出していた。
「いいじゃん!」
と、なぜか漁村の姫君、ユミールが真っ先に賛同した。
その声に小さく、ニカアッキが舌打ちをした。
チンコケースリーグ開幕!
チンコケースの世界一を決めるコンテストの名前は
「チンコケースリーグ」と名付けられた。
長いので「チンケリ」と略すか「チンコス」に略すか、10分ほど議論になったが「略す必要ありますか?」というコバゴーンの声に、アラフォーの職人全員が「DA---YO----NE-----!!」と声をそろえた。
コンテストであるからには、司会進行役が必要である。
そこで王子は、司会として人気の高い女性二人を抜擢した。
1人は元・チンコケース職人。
のちに単身、フランスに渡り、オペラ演劇に転向したミサバッコである。
選んだ理由は、チンコケース・コンテストの仕事を引き受けてくれる女優が他にいなかったからだ。
もう一人は、モモシー。
竹細工の世界では、名のしれた女流職人である。
しかし彼女は、チンコケース職人ではなく、椅子職人である。
「椅子タイムショック」「パネル椅子アタック25」「100万円椅子ハンター」「椅子!世界はSHOW by ショーバイ!」などなどの受賞作品がある。
そして最後に、職人に取材をしてくれる女性を探した。
そして有望な女性を1人見つけ出した。
とても歯の大きな女性で、名前をマツカヨと言った。
選んだ理由は大声で「チンコケース!」と言えそうな顔だったからだ。
街の書店、大声で「ゼクシィください!」とカウンターで叫んでるところを、見込みありとスカウトされた。
こうして、職人たちのまわりが、頼もしい協力者たちに固められていった。
(つづく)
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