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チンコケースの話。

チンコケースが見る夢


南米のジャングルの奥の奥。
「チンコケース」という文化があった。

男子は成人になると大勢が、竹の筒を切り出し、ナイフで削って加工し、チンコにかぶせる。そんなチンコケースは裸族の世界での、たしなみであり、お洒落でもあり、なにより男の証明であった。

とある部族に、チンコケースづくりがとても上手な男がいた。美青年で顔も凛々しく、見事なフォルムのチンコケースで颯爽と狩りに行く姿に、男も女もウットリと見とれていた。

やがて男は「俺が作る見事なチンコケースを食物と交換して、チンコケースだけ作って生きられないか?」と考えた。

好きなチンコケースを作ることだけで生きていきたい。
狩りに行って、疲れて帰って寝るだけの人生は嫌だ。
チンコケースを極めたい。チンコケースに溺れたい。
ノンノンそれじゃ物足りない。

チンコケースの魅力で、名のある部族の酋長にまで、男として登り詰めてみせようと。

しかしその夢を仲間に語ると、大勢に笑われた。

「チンコケースなんて、男なら誰だって簡単に作れる
「誰が大事な食物と、チンコケースを交換するものか」
「そもそもチンコケースなんて、ただの竹の筒じゃん」

しかし男は言った。
チンコケースはいいものだ。
この素晴らしさを、もっと広めたい。
みんなの知らない、新しいチンコケースを。

俺は人類初めての「チンコケースつくりのプロ」になる!


チンコケース職人集団


チンコケースは元々、夜にひっそりとつけるものであった。
お祭りの夜、深夜のデート、月夜の決闘、隠れたお洒落である。

しかし、チンコケースのプロを夢見た男は、昼間に大広場で堂々とチンコケースで歩き、その美しさを見せびらかした。

「そんなカッコいいチンコケース、どうやって作るんだ」
「もっと見せてくれ」
「俺も同じように作れないものか」

やがて、チンコケースを求める男たちが、食物を持って男のもとに訪れるようになった。毎日好きなチンコケースを作っているだけで、チンコケースで歩くだけで。狩りにも行かず、不自由もなく、ご飯が食べられる毎日。

気づけば、彼はチンコケースで生きられる
まごうことなき、チンコケースのプロになっていた。

年月が流れ。
男を真似て、チンコケースを極めようという職人たちが森に増えていった。

「俺のつくるチンコケースの方が、かっこいい」
「いっそ誰のチンコケースが一番か、腕を競おうぜ
「それ面白いな、コンテスト開催して食物を集めようぜ」
「チンコケースをジャングルの果ての果てまで広めよう

そんな職人たちが始めたコンテストは評判を呼び。
いつしか「チンコケース職人のプロ集団」が結成されていった。


職人集団、2つの派閥


さらに年月が流れ。

ジャングルの各地に、職人集団がいっぱい立ち上がった
チンコケースで、裕福な酋長になれるのは、わずかな者しかいなかったが。それでも職人たちは満足だった。好きなチンコケースを毎日作って暮らす。腕を磨き合う。競い合う。

や、こんなことで満足しちゃダメだろ!
チンコケースを広めて、チンコケースの魅力を伝えるのが
本当のチンコケース職人、本当のプロじゃないのか!」

そう叫んで、動き出した一派がいた。

まずはもっとチンコケースに注目してもらわなくちゃいけない。
そのためには、ただチンコケースを作ってるだけじゃダメだ。
伝説の男のように、みずからチンコケースを身にまとい、大勢の前でチンコケースをアピールするべきだ。さらにもっと派手に、楽しいものに。

こうして、チンコケースがより美しく目立つように、全身にペイントする者、チンコケース・ダンスを踊る者、チンコケース祭りを起こすもの、肩に背負えるくらいのチンコケースをつくる者、様々なアイデアでチンコケースを盛り上げようと彼らは動きまわった。

やがて、盛り上がりに誘われ

女だって、チンコケースしてもいいよね!
「女のほうが、チンコケースつけたら美しいはずよ!」
「私達のセンスのほうが、もっと素敵なチンコケースが作れる!」

と、女性のチンコケース職人も次々と生まれ始めた。

しかし、そんな動きを馬鹿にする一派もいた。

「チンコケースは本来、そういうものじゃない」
「もっと、おごそかで、神聖なものだ」
「見た目の派手さじゃない、削ぎ落とされたフォルムが大事なんだ」
素人にわかるようなチンコケースじゃだめなのさ

チンコケースを広めたい集団
チンコケースを極めたい集団

2つの派閥が生まれた。


外国からの黒船


そんな裸族のジャングルに、一隻のボートがやってきた。
ヨーロッパから見聞に来た、大金持ちの王子様である。

しかしこの王子、立派なスーツを着た外国人ながら、みずからもチンコケースを愛し、立派なチンコケースを作れる、一流の職人でもあった。

「素晴らしいチンコケースをジャングルの中だけで楽しんじゃだめだ。
 みんなで世界中に伝えよう!
 そのために、資金と人材はできるかぎり使わせてもらう。
 力を貸してくれ!
 チンコケースの大コンテストを、フランスで開催しよう!」

そうチンコケース姿で熱弁する裸の外国人に、職人たちが呼応した。


裸族たちは海の果てに、大きな夢を見た。
自分たちが極めてきたを、作品を、世界中に伝えられる!
ジャングルの裸族で終われねえ!


伝説の21人。



フランスのパリは、ファッションとアートの殿堂。
様々な美しく、きらびやかなデザインが、街中にあふれている。

こんな都会で、地味なチンコケースで、新しいムーブメントを起こすなんて、とてもできるなんて誰も思えなかった。

しかし、王子様がジャングルから連れてきた、よりすぐりの職人たちは、それぞれが芸術家としても演劇者としても一流だった。

ジャングルの大酋長ながら、欧米人を喜劇で笑わせる、タカハール
探検家の写真で、すでに美しさを海外に知られていた、ニカアッキ、ミヤマーリ。フランス人よりも金髪、シラトン。オランダ人よりも長身、モティー。イタリア人よりも美形、タッキル。アメリカ人よりデブ、バシループ。ドイツ人より強いユーダイマ。その息子の、最強の狩人匕サタルス。イギリス人より暗いアサップ。スイス時計より精巧に動くコバゴーン。ロシア人より酒を飲むコンドリア。間違えて連れてこられた船乗りソヌダ。毎日ジャングルに日帰りするセトベア。元々欧米人から帰化した宣教師ハギー・ルイス。ジャガーの血を引くカヤマル。森の神官ゼウス。漁村の姫君ユミール。その浜辺にいたミナミオオアザラシ。来航1ヶ月でフランスを歴史的な飢餓におとしいれた魔女クロサンドル。そして誰よりもチンコケースを極めたい純粋な職人、村上淳。

この伝説の21人が、パリを、そして世界をチンコケースで染めていくことになる…!

(つづく)

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