ブランディングをリブランディング

tiktokで唯一フォローしているアカウントがある。
北関東で肉牛の畜産をしている事業所なのだが、30秒くらいのある投稿を見て感動してしまったことが唯一フォローをしている理由だ。
(tiktokで誰かをフォローするとなぜか負けた気になるという・・・)
内容は、人懐っこいももちゃんという可愛い牛をトラックに載せ、畜産家のみんなが頭を下げて出荷を見守るという動画である。
生きるということや命についての真実がこの短い時間に全て集約されていて、長編映画を遥かに凌駕した圧倒的なひとつの物語があった。
しかもtiktokでw
この事業所は何気ない日常の動画を上げただけなのかもしれないが、
この動画を観たとき、この先数年はtiktokの時代になると確信した。
その理由については今回は触れないが、
とにかく、短尺で効果が最大化するというTwitterの原理が活かされているように思う。
このなにげない話が実は凄まじくイノベーティブなことである理由は後述する。
D2C(Direct to Consumer)とは、生産者、製造者が卸や小売を介さずユーザーへ販売することを指す。
このビジネスが持つ概念、形態がすでにDisruption(創造的破壊)を起こしている有名な話として、Casperの例が挙げられる。
アメリカではマットレスファームという寝具の小売大手があり、国内に3000店舗を展開していたが、小売店を持たずネット販売のみのCasperの台頭で、マットレスファームは2018年に倒産した。
これは小売という形態のいわば終わりの始まりとも捉えることができる。
Casperは従来の小売店を通した流通(B2B2C)をディスラプトしたわけだ。
D2Cは書いて字の如く、メーカーは購入者と直接接点を作ることができる。
小売店を通しては訴求が難しかったメーカーの姿勢をユーザーへ直接訴えることができるようになったのだ。
Casperはプロダクトの機能などの「モノ」に加え、
眠りという「コト」への強いこだわりを訴求した。
それ自体が組織のブランディングとしてユーザー獲得につながった。
そのむかし、様々なPCメーカーが機能の競争をしているそばで”think difference”と企業の姿勢をアピールするだけで、「良い機能だから買う」ではなく「appleだから買う」とユーザーを獲得した話に近い。
D2Cはアプリなどのテクノロジーを活用し、マーケティングや分析などUXを回し続け(これはamazon的な)ユニコーン企業となっているが、この核になるのが、それぞれの企業が目指していることであり、それを言葉や様々な媒体を通して表現される圧倒的な姿勢表明の一貫性をブランディングというのであると私は考えている。
日本の中小企業はブランディングを社内にするという不思議な文化を持っている。
「私たちは社会に○○を通して○○に寄与する」みたいなことを外で言わずに朝礼で言う。
逆に言い方をすれば、外に向かった正しいブランディングをするといった文化はこれからとも言える。これからということはビジネスとしてブルーオーシャンな領域といえる。
先程の畜産業者の話に戻る。
小売店で牛肉は買うし、価格を見てどっちが良いか選んだりはするが、
いちいち牛肉のトレーサビリティーとか気にするはずもないし、
米国産か国産和牛かなんてのはいわば機能の差だから単純価値の選択となる。
ところが、畜産家が牛にどれだけの愛情を注いで、淋しさを抱えつつ「美味しく食べてもらうんだよ」と寂しそうに荷台に佇む牛に声をかける絵を見た時、この畜産業者の牛に対する愛情や、映像にはないのに飼育に対するこだわりや責任の強さ、食肉を通した社会への責任感などが30秒で伝わってくるのである。
えげつないほどの付加価値である。
とはいえ、牛を1頭買いするコンシューマはいないので、この業態ではD2Cは難しいが、いずれにせよこの畜産業者の姿勢が30秒の映像で伝わり、まさにそれこそがブランディングであると言える。
tiktokではこのような企業PR的な動画は多くあるが、
やはりなにかしらバズろうとしたものが多い。
つまり、腰を据えて「我々は何をするために社会に存在するんだろう」と考えていないと思われる。
腰を据えてブランディングをし、その映像をディレクションし、最適なメディアを選択し、しっかりKPIも設定するコンサルティング会社・・・
という業態はこれから流行るのではないだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?