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ひきわり納豆

毎日納豆をたべる。
一番好きなのはひきわり納豆だが、価格の関係で中粒を選ぶことが多い。

テレビで納豆工場の特集をしていた。
さすが企業、こだわりが多い。
どうやら僕が安さで選んでいる中粒納豆も、“中粒”と付くだけあって、ちゃんと大きさを選別されているらしい。

ふるいにかけられて選別された中粒が中粒納豆となる。
ふるいにかけられて選別された小粒が小粒納豆となる。
ふるいにかけられて選別された大粒は細かく砕かれて引き割り納豆になる。

なぜだ。

この結末には流石の大粒も肩を落としていることだろう。

人間に置き換えてみる。
幼い頃から鍛錬を重ね、勉強も怠らない。
体も大きければ心も強い。
どこにでも通用する人物へと成長した。

春風に吹かれ社会の入り口を跨いだ。
入社式、周りを見れば自分と同じ英傑が揃う。
次々と名前を呼ばれる同期、あいつは不動産部、あいつは広報、あいつは…。

「大粒 優」
「はい」

人事の声が自分を呼ぶ。
緊張に返事が震える。

「君は…、

君はバラバラだ。」


なんだバラバラって。
大きく育ったからひきわりって。
大きさを活かせ。

試しに大粒納豆を買う。
バラバラになる運命を避けた運のいい奴ら。
ひきわりを傍目にのうのうと発酵してきた奴ら。
口当たりが悪くて好みではなかった。

僕は今後もひきわりを口に運ぶ。
在りし日の大粒、かつて大きかった者たちを思う。

ひきわりがいいね。





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