「あるある探検隊」は何者なのか。

今年の3月あたりだったと思うが、とあるテレビ番組にお笑いコンビのレギュラーが出演し、15年前に一世を風靡した「あるある探検隊」ネタをやっていた。
平成にヒットしたリズムネタ芸人が勢ぞろいし、視聴者投票か何かで一位になった一組だけフルで披露できる、というような企画だったと思う。
当時小学生だった自分のことを思い返しながら懐かしい気持ちで見ていると、あることに気づいた。

導入がトチ狂っているのである。

どんな内容かうろ覚えの方も多いと思うので、詳しく書いてあるwikipediaから引用する。

1.まず最初に西川が、「緊張してきた」などと口走りつつ、目を半開きにした顔をして左手を斜め前方にあげ、「フグゥー」とうなって「気絶」を表すポーズをとる。
2.すると相方の松本は、この気絶状態から西川を解放するために「あるある探検隊」をはじめる。松本が言う「あるあるさんとこの、探検隊を呼ばなあかん」が恒例となっている。
3.松本は腰と両腕を前後に大きく振りながら「デュデュビデュバデュビ」と掛け声をかけ、続いて「ハィ! ハィ! ハイ、ハイ、ハイ!」 というかけ声に合わせて横にいる西川に手を順次に置き(手の置き方は『左手→右手』)、松本が「ワオ!」と叫び、足を踏み出して(足の踏み出し順は『左足→右足』)松本の顔芸(顔の向き順は『左側(お客と反対側)→右側(お客側)』)をはさみ、行進をするように大きく腕を振って「あるある探検隊! あるある探検隊!」と言ってからネタにつながる。
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/レギュラー_(お笑い)

今冷静に見返すと「なぜ?どういうこと?」というポイントがあまりに多い。

1.西川君の「緊張すると気絶する」「あるある探検隊の到着により意識が回復する」という特異体質に、ネタ中一切突っ込みが入らないのがすごい。個人の健康問題だからか?

2.あるある探検隊を呼ぶ→西川君が目覚める、の理屈があまりにも意味不明ですばらしい。
 あと「あるあるさんとこの探検隊」であって「あるあるネタを探す探検隊」ではないことに今更気づいた。
 "あるあるそのもの"から生まれた、分化した存在であるか、"あるあるそのもの"に従属しているのだろうか。なんだかイデア論の話みたいだ。
 余談だが、前者の文法に近いのが「藤岡弘探検隊」で、後者に近いのが「徳川埋蔵金発掘チーム」である。
 
3.その動きは何だ。救急車を呼ぶために電話するように、あるある探検隊を呼ぶためにその動きが必要なのか。
 また、あるあるネタを言う前に西川君が元気になっている。あくまで西川君の状態異常回復のトリガーは「あるある探検隊のネタ」ではなく「あるある探検隊の存在(到着)」そのものなのだ。

以上のように整理するうち、「あるあるネタをやる口実が漫才中にない」ことに気づく。
ここにおけるあるあるネタは、ラーメンズのコント中の変な歌パートと同じ立ち位置と見た方が良いだろう。
下記のような「特に説明はないが、まあそういうものなんだろうな」と思わせるネタである。(どちらも公式)

https://www.youtube.com/watch?v=kVLRsxaKWGI

https://www.youtube.com/watch?v=1izbHtJ1nLg

だとしても、最低限の理屈は必要だ。
「怪傑ギリジンはそういう人だ」「基本的にお前が悪いときはこの踊りだ」
という、最低限の世界観がラーメンズのネタにはある。最低限すぎることが笑いにもつながる。

ではあるある探検隊はどうか。この2つのどちらかだという気がする。
1.あるある探検隊が西川君を助けてくれたお礼に、レギュラー二人であるあるネタを披露している。あるある探検隊はあるあるネタが大好き。
2.あるある探検隊は西川君救助とは関係なく、生命が常に呼吸するのと同じように常にあるあるネタを言っている。レギュラーはそれを漫才の都合上演じているか、レギュラーにあるある探検隊が憑依している。
あたりだろうか。

しかし忘れてはいけないことがある。あるある探検隊は稀に支離滅裂な文章をリズムに乗せるだけの「ないない」ネタを言うことがある。
※wikipediaによると「エンタの神様」ではやらなかったらしい。そうだっけ。
"あるあるそのもの"からやってきたあるある探検隊がないないを言うだろうか。正解は1に思える。人間ならば少しくらいのミスはするものである。

なんだか、あるある探検隊が超自然的な存在に見えてきた。あるある探検隊自身にはまったく人間らしさが感じられない。神性すら感じる。
病に倒れた同胞に驚き、人間は降臨の儀式を行う。探検隊は突然音も形もなく現れ、人間の病を治す。人間はその降臨にただ驚き、その御業を目の当たりにし狂喜乱舞、感謝の舞を踊る。

レギュラーは何気に正統派漫才もできるのだが、なぜ漫才のお約束をすべて破ってあるある探検隊のネタをしているのか。
自らの実体験を宗教色を薄めシュールなコメディにすることで、神の奇跡が実在することをお茶の間に伝えたいのではないか。
文明を揺るがす真実を真実のまま伝えることはマスメディアでは不可能に近い。結果として抱腹絶倒超絶おもしろネタになってはいるが、本当にしたいことは伝道師なのである。

神はいる。あらゆる宗教を超越し、神の御業が人々を苦しみから救う。
レギュラーが己の過去から紡ぎだす神の奇跡をその目に焼き付けろ。

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