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実は進んでいる介護のDX、ハードウェアを使って真のトータルDXへ

コロナ禍でも人手不足の介護業界

「人手不足の業界はどこか?」という問いに対して多くの人が「介護業界」と答える程、誰もが介護業界の人手不足の深刻さは理解していると思われる。

それは統計にもはっきりと表れており、厚生労働省が発表しているハローワークにおける求人、求職、就職の状況を取りまとめた「一般職業紹介状況(令和3年9月分)」によると、介護サービスの職業の有効求人倍率は3.63倍となっている。
有効求人倍率とは『1求職あたりの求人の割合』であり、つまり有効求人倍率が1ならば、1人求職者に対して1つの求人があるということになる。従ってこの割合が高ければ求職者は仕事に就きやすく、割合が低ければ仕事に就くのは難しくなる。

介護サービスの有効求人倍率が3.63ということは、簡単に言うと介護の仕事を求めている1人に対して、約3〜4件の求人があるということだ。

ちなみに令和3年9月分では全職業平均の有効求人倍率は1.16倍であるから、コロナ禍とはいえ、いかに介護サービス業界の人手不足が深刻かが分かる数字となっている。

厚生労働省Webサイトより抜粋

既に専門ソフトウェアは成熟

DX化という観点から見ると、介護業界が遅れているかというと全くそんなことはなく、逆にDX化は進んでいるのだ。

介護・福祉向けの専門システムは20年以上前から存在しており、現在は大手を含め既に多くのベンダーが開発・提供を行っている。

専門システムでは利用者個々の現状の管理・見守りのみならず、施設の空室や空きベッドの管理、ケアプラン作成、入居判定、介護報酬請求に必要な媒体作成、入居者の預り金管理のシステムまで必要なものはほぼ用意されていると言っても過言ではない。

ユーザービリティいに関しても、スマートフォンやタブレットを活用することでICTのリテラシーに明るくな施設スタッフでも入力しやすく、かつ抜け漏れが出ないような工夫も取られている。

当然ながらオンプレミスのみならず、ハウジングサービスやクラウド対応など提供されている。

システム内だけにとどまらず、施設に設置されたセンサーとの連携なども図れるため、入居者のリアルタイム管理も可能となっており、上記以外にもシステムベンダーによっては様々なオプション機能も用意されている。

ほのぼのNEXT NDソフトウェア
https://www.ndsoft.jp/product/next/
福祉の森 日立システムズ
https://www.hitachi-systems.com/ind/fukushinomori/about/index.html

介護施設のデスクワークに関する部分については、専門ソフトウェアによってカバー出来ている状況となっており、この部分に関してはDX化の道筋が付いていると言えよう。

ハードウェアの利用はこれから

実際に機器やロボットを使用する現場のスタッフはどの様に受け取っているのだろうか。

介護事業者を含む介護分野全般に対する支援事業を行っている公益財団法人介護労働安定センターが毎年1度行っている「令和2年度 介護労働実態調査結果(http://www.kaigo-center.or.jp/report/2021r01_chousa_01.htm)」を見るとスタッフがどのよ様に感じているかの現状を垣間見ることが出来る。

公益法人財団法人介護労働安定センター
令和2年度 介護労働実態調査結果 より抜粋

「職場での取り組み状況と働く上での悩み、不安、不満等の解消」という項目の中に、『福祉機器やロボットの導入』の項目がある。

それによると、回答者の全体の14.1%(複数回答)が福祉機器やロボットの導入が行われれいると回答。特に入所型施設では31.7%が導入されていると回答。

しかし、役に立っているかという回答を見ると全体では7.9%であり、導入されているという数字が高かった入所型施設でも17.8%にとどまっている。つまり、導入されていてもその半数しか役立っていないと感じていないという現状が見て取れる。

以前、腰痛などを防止し体力的負担の軽減するパワードスーツが導入されいた介護施設のスタッフにヒヤリングを行った際、利用について聞いたところ「正直なところ使っていない」という回答があった。その理由としては「使うと便利で補助してくれるのは分かるが、着脱などの準備に時間がかかってしまうため、その時間も利用者を対応したほうが結果として効率的だった」と話していた。

RFIDとは
デンソーウェーブ Webサイトより抜粋

あくまでも、ヒヤリングを行った先の個人的に感想であり、パワードスーツも改良がされ着脱がしやすくなっており、また使っていくことの慣れで着脱の速さも変わるだろう。

施設側も現場のスタッフの労働環境改善の一貫として導入したにも関わらず、実際のオペレーションの中に組み込むと、習熟までいかずに止めてしまうというケースもあるのではないだろうか。

しかも、介護向けのロボット導入については、各自治体が導入助成金などを用意しており、その補助率も1/2〜4/3などと非常に高くなっている。そのためハードウェアを扱っているベンダーや商社もそれを含めて事業者へ提案することも多いと聞いており、取り組みとしては非常に前向きであることも分かる。

これまでのロボット活用と、今後に向けての活用方法

それでは、ロボットをなどを介護の実際の現場で利用する際はどんな活用方法が良いのだろうか。

具体的に考える前に、介護される側はロボットの活用について、どう考えているかを見ていきたい。

2018年11月にオリックス・リビング株式会社(現:グッドタイムリビング株式会社)が実施した『介護に関する意識調査データ』には介護ロボットに関する設問項目がある。

その中で、「今後介護される立場になった場合、介護ロボットによる身体介護を受けたいですか?」という設問に対しては、「受けたい」が13.1%、「ロボットが推奨されていれば受けてもよい」が71.2%となっている一方で、「ロボットによる身体介護は受けたくない」の14.7%となっている。

この数字だけを見ると、8割を超える回答者が「ロボットでの介護を受けたい・受けても良い」と見て取れるが、詳しく見ると違った側面が浮かび上がる。

オリックス・リビング株式会社(現:グッドタイムリビング株式会社)
『介護に関する意識調査データ』(2018年11月11日発表)より抜粋

次にロボットによる身体介護を受けたいと思った理由についての結果を見てみる。

それによると「ロボットが推奨されていれば受けてもよい」「積極的に受けたい」と回答した27.2%は「本当は人の手が良いが気を遣うから」としており、一方の「ロボットによる身体介護は受けたくない」と回答した46.9%が「人の手で介護され たいから」と答えている。

オリックス・リビング株式会社(現:グッドタイムリビング株式会社)
『介護に関する意識調査データ』(2018年11月11日発表)より抜粋

つまり、全回答者の約3割は「出来れば介護は人の手でして欲しい」と望んでいることが見えてくる。

介護するスタッフが、利用者に対して手厚くケアを出来る環境を作る為にロボットに何が出来るかを考えるのが求めていくべき形なのでは無いだろうか。

ロボットな得意な点は、決められたことを的確に行うというようなルーチンワークや、人が働きたがらない時間であっても関係なく作業が行えるという点、センサーなどの機器情報を的確に受け取れる点などが挙げられる。

「ルーチンの中に取り込める」ような事こそ、ロボットが行うことで全体的な効率化が図られると考えている。

例えば、スタッフがある程度いる昼間は入り口などでの受付や施設内巡回・荷物の受け渡し業務などを行い、夜は利用者や施設に異常が無いかの巡回、徘徊を行っている利用者に対しての声掛けとスタッフへの状況報告、また施設内の清掃などを行うという様な使い方が想定される。

特に介護施設はバリアフリーとなっており、エレベーターも一般の施設などと比べても余裕をもっているケースが多いため、ロボットが活動するには適した場所で有ることは間違いない。

『ugo(ユーゴー)』を使い真の介護DXを

介護業界のDXをトータルで完成させる為に最適なロボットの一つがugo株式会社のロボット『ugo(ユーゴー)』だ。

ugoシリーズ

ugoは移動を行うことが前提で作成されたロボットである。当然ながら衝突検知センサー含め各種センサーやカメラも搭載されており、施設利用者・スタッフと遭遇した場合も停止や回避などを行い衝突を避けることが可能となっている。

2本のアームは正確なコントロールが可能となっており、エレベーターの操作盤も可能なため、同一フロアのみならずエレベータを使用し上下のフロアに対しても自律移動出来る。また、それ程重くないものならば搬送も可能なため、施設内の物品搬送にもugoを使うことでスタッフの業務削減に繋がる。

また、ハンド部分に関しても取り替えや物を掴むことが可能となっているため、モップを使った簡単な清掃業務などの対応も検討が可能だ。

ugoはクラウドプラットフォームの「ugo Platform」も用意されている。これによりugoの操作や状況をスタッフも確認することが出来、ugoからのデータ取得なども確認ができる。また施設内に設置されているセンサー情報を取得し、組み合わせることでワンストップ管理が可能となる。

ugo Platform
ugo株式会社

例えば、特に夜間は清掃を行いながら、施設内や利用者の部屋のセンサーなどと連携し異常があった場合にugo自身がドアを開けカメラを使ってリアルタイムで居室内の模様をスタッフに共有することで、スタッフが次の打ち手を検討・対応することが出来る。
また、徘徊をしている利用者を発見した際も、声掛けを行うことで足止めをしつつ位置をスタッフに共有することで、トラブルの防止なども可能となるだろう。

デスクワークの部分に関しては介護業界はある程度のDXが浸透しているが、実際の業務部分についてはシステムだけではなく、ロボットなどのハードウェアを活用し、利用者に対して「人が介護している」という安心感が伝わってこそ、介護業界においてトータルのDXが完成するのではないだろうか。