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KDDIなど世界初の『水空合体ドローン』で遠隔で水中の様子を撮影に成功

KDDI株式会社(以下:KDDI)、KDDI総合研究所(以下:KDDI総合研究所)と株式会社プロドローン(以下:プロドローン)は、2021年11月17日に世界初の『水空合体ドローン』を自律飛行させて、遠隔で水中の様子を撮影する実証実験に成功したと発表しました。

今回の実証実験では「洋上風力発電所の点検及び漁礁となる藻場の状況調査を想定し、水中の撮影を実施」というものです。

水空合体ドローンによる、モバイル通信での遠隔水中撮影実証


今回実証実験に使用した水空合体ドローンは、水中ドローンを空中ドローンのゲージにおさめて、水中ドローンの離脱・回収が可能となっています。イメージとしては懐かしの特撮番組のサンダーバード2号にサンダーバード4号が格納されているという感じでしょうか。

遠隔操作に関してはKDDIがもつ「スマートドローンプラットフォーム」を用いて、水空合体ドローン自体に自律飛行の指示や両ドローンのカメラのリアルタイム中継を見ながら水中の状況を撮影することが出来ます。

いざ水中に潜った水中ドローンが今どこにいるのかどうやってわかるのでしょうか?
水中ではGPSなど電波を受信することは非常に難しいため、「音響測位」という技術を使っています。具体的には、水中ドローンに搭載されている音響発生装置から音響信号を出します。それを空中ドローンに付いている音響受信装置で受信をして、両方のドローンの測位結果を合成することで、水中ドローンの位置を特定するということです。ちなみに日本の深海潜水調査船の「しんかい6500」などでも、母船と位置測定に音響測位の技術が用いられています。

水中での音響測位の仕組み

今回の実証実験では「洋上風力発電所の点検及び漁礁となる藻場の状況調査」を想定しましたが、今後水中ドローンの利用フィールドは大きくなると言われています。
例えば、養殖や定置網の状況確認や今回の様な水上・水中でのインフラの点検、災害発生時の情報収集など多岐にわたります。
拡大の理由に拍車をかけたのがダイバーの人手不足です。水中調査に関してはダイバーを利用するというのが一般的でしたが、潜水時間や深度、天候などのダイバーに対する安全面の制約と共に高齢化が進んでおり現状深刻な人手不足となっています。

そのため、ダイバーへの置き換えとして水中ドローンを使うというケースが増えてきており、株式会社日本能率協会総合研究所の調査では2025年度の水中ドローンの市場規模は70億円になるという予測が出ています。

株式会社日本能率協会総合研究所 水中ドローン市場規模・予測 より抜粋

一方で、水中ドローンメーカーという視点で見ると、中国メーカーが多数存在しており既にしのぎを削っているという状況が起こっていて、一般的な水中ドローンと言われているROV(Remotely Operated Vehicle)以外にも、自律して海中数百メートルを数時間潜航することが可能なAUV(Autonomous Underwater Vehicle)や、数千メートルの潜水が可能なUUV(Unmanned Undersea Vehicles)などを提供しているメーカも存在している。この部分は軍事技術の転用しているという側面もありますが、水中ドローンの市場でも空中ドローン同様に中国の影響が大きくなる可能性は十分にあると思われます。

現状では水中ドローンを使用するとしても、調査地点が水上の場合は船を出して水中ドローンを操作するという状況なため、安全性や効率性を考慮するならば、水空合体ドローンの現実性と将来性は非常に高いと思われます。