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国立西洋美術館 自然と人のダイアローグ展

国立西洋美術館 自然と人のダイアローグ展を見て

 リニューアルオープンして最初の展覧会。
 国立西洋美術館がリニューアルのために休館してしまったのがずっと寂しくて寂しくて仕方ありませんでした。
 休館前最後の展覧会には4回足を運んだほどです。
 自然と人のダイアローグ展、とても良かったです。
 特に印象に残った作品について書きます。
※一部撮影不可の作品もあったのでお気をつけください。

音声ガイドも豪華。次に来た時は絶対に聞こう。

1枚目 クロード・モネ「ルーアン大聖堂のファサード」

 朝日に照らされた教会。一目見て好きだと思った。好きだなぁと思って作者を見たら、モネだった。うーん好き。
 教会という建物が持つ神聖さが、朝日を浴びることでさらに強められている気がする。人間が作った神聖さが、太陽の光、それも朝の光を受けて神々しい。
 でも人を寄せ付けないような、畏怖を感じさせる神々しさではなくて、むしろ吸い込まれて上へ昇っていきたくなるような……言葉にするのって難しすぎる。

2枚目 テオ・ファン・レイセルベルへ「ブローニュ=シュル=メールの月光」

 夜の海。点描画って光や水面、空気の揺らぎを表すのに一番適した手法なんじゃないかと思ってしまう。
レイセルベルへという画家の作品。初めて聞いた。
 月の光が頭上から降り注いでいて、つい上を向きたくなる。夜の静けさと海のざわめきが伝わってくる素敵な絵。
 月の光が冷たいなんて誰が言ったんだろう。静かだけど暖かい。ベートーヴェンの月光より、ドビュッシーの月の光を聞いたらこの絵を思い出しそう。

3枚目 ポール・シニャック「サン=トロペの港」


 これも2枚目と同じく点描画。
 ポール・シニャックの絵は、その場の空気まで切り取っているみたい。朝特有の、これから1日が始まるぞ!っていう前向きなざわめきを感じる。1枚目の神秘的な朝日とはまた違う、明るくて賑やかな朝日。
 色々な展覧会で度々出会ううちに自然と好きな画家になった、私に美術館の楽しさを教えてくれた恩人。

4枚目 クロード・モネ「セーヌ河の朝」


 これもモネの作品。モネは水面と緑、特に柳を描いた作品が一番好き。色でいうとモネの紫と緑が一番好き。
 ハマスホイという画家の作品も私は大好きなのだけれど(今回は残念ながら無かったが、常設展には確かあったはず)、ハマスホイは温かい空気が満ちているような静けさなのに対して、モネの静けさは緑や水や空気の揺らぎを含む静けさだなと思う。
 二人とも「無音」の静けさではなくて、ハマスホイは生活音のある静けさ、モネは自然の音を含んだ静けさ、という感じ……伝わります?どちらもエネルギーを湛えた静けさなんです。
 私はきっと空気を描いた作品が好きなのだと思う。ルノワールなら劇場の高揚感のあるざわめきが伝わってくる絵が好きだし、フェルメールなら静かだけど物語性のある絵が好き。

5枚目 「睡蓮、柳の反映」


 モネの睡蓮。ずっと行方不明になっていて、かなり痛んだ状態で見つかったもの。
 修復されたけれども完全な姿には戻らなかった。でも、というか、だからこそ、より自然の不屈のエネルギーを伝えてくれるなと思う。もうこれ自体が新しい作品になっている。
 題材も私の大好きな水面と、柳と、睡蓮。水面と空気の揺らぎが伝わってくる。
 松方コレクション展で見て、久しぶりに再会できた。嬉しい。

おわりに

 展覧会を見終えていつものようにポストカードを買おうとしたとき、4枚目の絵だけは2枚手にとってしまった。
 一見凪いでいて静かで穏やかだけれども、強いエネルギーを感じるような、静かで包容力があるけど少し揺らぎもあるような、もっと知りたくなってつい奥まで進んでしまいたくなるような、でも踏み入って荒らしたくはないような、そういう感じがなんとなくある人を思い出させた。優しくて穏やかで少し寂しさの陰があるようなあの目に通じたのだと思う。
 あの人が木陰なら、私は何だろう。木陰を守れる人になりたい。

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