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「まずはともかく1000語」についての雑感

言語学と文学のはざまで生きる、とご自身を表現なさっているkrbys先生(『ヘミングウェイで学ぶ英文法』で有名なあのkrbys先生ですね!)が先日こんなツイートをしていらっしゃいましたが、

語彙の獲得(習得)は、とはいえ語学の最大の難しいところ。千野先生の同書(おそらく、『外国語上達法』が正確な書名かと存じます。先日例の「大学授業一歩前」でもおすすめの本として私が挙げたのは奇遇でありましたか)で、たしかに語彙についての学習が軽視されているという指摘があります(p48)。

その理由として、千野氏は同書で3点指摘しています。

(1) つまらないこと
(2) 終わりが見えないこと
(3) どのような語彙を選択するかの自覚がないこと

ということで、何の言語をやるにしてもこの3点は課題としてもっておかないといけないわけですね…

さて、現実への具体的な方策として千野氏が挙げているのは、まずその言語を習得したいという「欲望」が「衝動」に変わるまで待ち、その衝動によってとにかく1000語覚えるという手順です。

この1000語の習得にあたっては辞書を「引かない」こと、とも千野氏は指摘していて、入門書なり教科書なりに載っているはずの基礎的な語を、前述の衝動(のエネルギー)が尽きる前にとにかく書いて覚えるべし、という趣旨のことを書いています。

なるほど。たしかにそういう要領だよなあと思います。その意味では私が今やっているロシア語学習でも、語彙の学習はやや軽視気味だったかもしれない。まとまった時間が必要というのは実感としてもよくわかります。

トルコ語のほうに目を向けてみます。こちらは私からすると、「教える側」。で、全く白紙の状態からスタートした人たちを対象に、週1回90分の講座で語彙を習得してもらうというのは最大の懸案事項でもあります。

これは学習者各位がなんとかしてもらわないといけない問題でもあるわけですが、全く何もしないわけにもいかないのですよねえ…

語彙の件、今年春学期がスタートした直後くらいから私も個人的に一応気にはしていたので、講座で独自に配布しているプリントに、少しでもお役に立てばというつもりでトルコ語の単語を20語程度載せてみていました。

毎回というわけではないのですが、仮に1学期12回講座があるとして1回20語なら、12回で240語ですか。2学期やれば、480語。目標にはまだまだ届かないとはいえ、まあ一助にはなりそうな割合かなとも思うのですがどうか。

個人的な実感としては、教科書に載っている語数だけではものたりない、と思われそうで不安だったということがあったのです。

が、一方で学習をスタートしてまだ時間が経過していない人たちに対して情報を大量に提供しすぎているということも教える側として心配するべきなのかどうなのか。こちらとしては、教科書を淡々と進めるだけでもいかがなものかね、ということも心配しているということもあるのです。

教科書を淡々と進めるという方策はまあ、それはそれで楽ですし、がんばっていろいろ別に用意したからといってもらえる額が変わるわけでもないのですが、それはまた別の話…

いずれにしてもこの「最初の1000語」というのが確かに重要ということはあると思います。同意できる。

で、ここがしっかり自分の基礎になれば、あとは1500語に増やすのはさほどエネルギーがいらないこととか、その言語の単語の構成(形態構造のこと?現実としては、音韻構造やアクセントなどの情報なども含んでいるような気がします)がなんとなくつかめてくるということも確かにその通りかと。

この件では私の大阪時代からの畏友でもある、アポ(注:ギュルベヤズ氏の愛称です)がドンピシャのテーマに即した語彙集を、以前大学書林から出していました。ちょっと今現物が手元にないのでアレですが、これも持っていれば学習の役には立つのではないかと思います。

ということで。まずは1000語。あくまで、「まずは」ですが。やりましょうやりましょう。ここをクリアして、さらに語を覚えたくなる状態にもっていけば成功なわけですから。

私もロシア語でやってみます。みなさんはトルコ語あたりでぜひ。

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