リーグ戦開幕延期の件について

これから、我々にとって喜ばしくない事実をお伝えしようと思います。

簡潔に申し上げますと、先日、3/9に野球のウガンダ国内リーグ戦が開催される予定であるとお伝えしましたが、我々も現地へ視察に伺った開幕戦が開催されませんでした。

この出来事の背景について発信することで、ウガンダのみならず、発展途上国支援の”現実”のほんの一部でもお伝えできたらと思います。

開幕戦のカードはルウェロvsジンジャ(どちらも地名)の予定でしたが、ジンジャの選手達が当日に集まらなかったため試合は中止となりました。そのため、結局この日はガヤザに来ていたルウェロチームの紅白戦を行いました。その様子については9,10日目の滞在レポートを読んでいただけたらと思います。

”選手が集まらなかったため中止”というのはリーグ設立以来初めてのことでした。ジンジャの野球選手は元々難民の人が多く、大半はスラムに住みながら野球をしています。そのスラムに住んでいる選手達が集まらず、コーチは彼らの家を回ったがいなかったとのことです。前々から決まっていた予定であり、来るといっていたのにも関わらず来なかった、というのは何かしら理由があるはずで、何かしら仕事の関係やお金が絡む問題が発生したのだろうと考えられます。

ここからは憶測も入って来るのですが、ちょうど同時期にアメリカ政府が北部の難民に向けて野球教室を開催するボランティア活動を行っていました。実際に、このボランティア関連でナショナルチームの練習試合が延期になったり、リーグ運営にも少々の支障が出ているそうです。
今回も、おそらくはジンジャの集まらなかった選手達はアメリカ政府のボランティアに帯同していたのではないでしょうか。聞いたところによると、これまでも、ジンジャの選手達の多くが難民ということもあり、アメリカ政府の要請で多くの選手達が何回か同様のボランティアに帯同しているとのことです。

スラムに住む選手達が、”たかだか朝食と昼食が支給される程度の地域ごとのチーム同士の試合”と、“そこそこの謝礼金が出るボランティア”のどちらに行くかを考えて見ると、答えは明白です。このように、経済的理由から弱い立場に立たされてしまっている、言い方は悪くなりますが”目先のお金をちらつかされて飛びつかないわけにはいかない”、”お金のある先進国の都合に振り回されてしまう”というのが発展途上国の人々の現状です。(もちろんこの発言にはリーグ戦を運営している我々の主観が入っていて、そもそも選手達はリーグ戦などやりたくないのかもしれませんが…)

逆に先進国の、ボランティアをする側に立って考えて見ましょう。彼らはボランティアのための予算を継続的に確保していく必要があり、その為にはわかりやすい”実績”を上げる必要があります。”難民の子供達に野球を教えた”というのはとてもわかりやすいボランティアの”実績”になるでしょう。しかも、彼らは政府の予算を使うことができ、現地の人々を簡単に雇うことができます。要は、容易に”実績”を挙げることができるということです。
アメリカ政府側がリーグ戦の存在を知っていたかどうかは定かではないですが、何れにせよスラムの選手たちもわざわざお金がもらえる機会を「予定があるから」といって断ることはないと思われます。

ただ、この容易な実績が本当の意味で実績たりうるかは疑問が残るところです。
以前、チャンボコというところで青年海外協力隊の日本人が数人で野球を指導し、そこでは定期的に練習が行われ、そこで育った何人かの選手は日本に来てプレーしたり、現地で野球のコーチを始めたりしました。しかし日本人がいなくなった今では、チャンボコのチームは事実上成り立っておらず、練習もせずにリーグ戦の時だけ試合をしにくるという状況です。つまるところ、きちんとした指導者がいないと継続的な活動は見込めないということです。
この例から考えても、北部の難民に野球教室という形で野球を教えたところで、ボランティアが撤退した後は指導できる人間がいなくなり、野球が広まることはないと思われます。

多くのボランティア活動が撤退後に水泡に帰すというのはよくある話だと野球隊員の田中さんがおっしゃっておりました。

我々のリーグ戦開催費用の提供が果たして本当に継続性のある活動と言えるのか否か今一度見直して、また新たなウガンダ野球への関わり方を考えていく必要があると痛感させられる出来事でした。

以上、憶測を含んだ内容となってしまいましたが、読んでいただきありがとうございました。また詳細な事実がわかりましたら記事を更新するかもしれません。
これからも我々はウガンダ野球の”今”を発信していきたいと思います。

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