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ウクライナ戦争に関する私見 烏賀陽弘道

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2022年2月24日の開戦以来、ウクライナ戦争について分析した論考を書き続けいています。無料で読めます。価値があると思われたらカンパ・サポートしてください。
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旧ソ連国の視点から見たウクライナ戦争を     ジョージア人国際政治学者に聞いた   「ロシアは旧ソ連の『近い外国』を      対等の主権国家と考えていない」

2022年2月24日に始まる(第二次)ウクライナ戦争について、ひとつの論点を読者に提供するため、かつてソ連の一国だった国の人々に同戦争をどう見るかインタビューすることを思い立った。 ●ジョージアとウクライナの共通点 私が注目したのはジョージアである。ロシアとの関係において、ジョージアはウクライナと非常によく似た立場にあると考えた。 ①モスクワやサンクトペテルブルグを中心とする「ロシア」に軍事的に征服され、ロシア帝国→ソ連の一部として併合された。 ②1991年後のソ連崩壊

ウクライナ戦争を理解する歴史知識7  ウクライナ・ロシア32年間の負のループ  政治・経済・国際関係とも抜け出せず     最後は武力侵攻という暴挙に         ウクライナ戦争に関する私見 分析編 2023年2月1日現在

前回、前々回本欄で、ソ連崩壊・ウクライナ独立後32年の歴史をたどってみた。たいへん複雑である。自分で書いていても、平易にまとめるのに四苦八苦した。 そこで、さらに本編で「分析と解説」を加えることにした。 ロシア・ウクライナの過去32年の歴史を調べていくうちに、いくつかの「パターン」が繰り返されていると私は考えるようになった。そのうち、特徴的な次の3点を抽出してみた。 (1)「経済」「政治」「国際関係」3つの負のループに2国間関係がはまり込み、抜け出せなくなった。 (2)

ウクライナ戦争を理解する歴史知識5  軍事侵攻以前から続くロシアとの紛争     政治混乱と汚職・寡頭支配で不安定   ウ経済はソ連時代の6割に縮小     32年間政治・経済体制の移行に失敗  ウクライナ戦争に関する私見18/概観  2023年1月20日現在

今回は1991年にソビエト連邦が崩壊、ウクライナが主権国家として独立してから、2022年2月にロシアが軍事侵攻するまでの話をする。 日本人の大半は、2022年2月24日にロシアの軍事侵攻が始まって初めて、ウクライナという国に注意を向けるようになった。「戦争が始まるまで、ウクライナはどんな国だったのか」を深くは知らない。その空白を埋めようというのが本稿の狙いだ。 前編では、まず独立後ウクライナのOverall View=全体像を俯瞰していく。いわば「概観」「概論」である。後

ガス輸出で「戦争経済」が回転     ロシアに経済制裁効かず       戦争は「月」「年」単位に長期化     ウクライナ戦争に関する私見9    2022年4月21日段階 

前回の投稿から約20日が過ぎた。本稿では、その間に起きた出来事と流れを概観してみようと思う。 2022年3月29日にイスタンブールで開かれたロシアとウクライナ代表による対面の第4回停戦協議で、両者が合意の道筋に乗ったかと私は思った。開戦後約1ヶ月を経て、ウクライナ戦争が終結する光明が差したかと思いきや、戦闘はかえって激化した。 ロシアは懸念された国債デフォルトに陥らなかった。ドイツ、イタリアなど欧州は天然ガスをロシアから買い続け、代金を払い続けている。つまり欧米日の経済制