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ウクライナ戦争に関する私見 烏賀陽弘道

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2022年2月24日の開戦以来、ウクライナ戦争について分析した論考を書き続けいています。無料で読めます。価値があると思われたらカンパ・サポートしてください。
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ウクライナ戦争を理解する歴史知識7  ウクライナ・ロシア32年間の負のループ  政治・経済・国際関係とも抜け出せず     最後は武力侵攻という暴挙に         ウクライナ戦争に関する私見 分析編 2023年2月1日現在

前回、前々回本欄で、ソ連崩壊・ウクライナ独立後32年の歴史をたどってみた。たいへん複雑である。自分で書いていても、平易にまとめるのに四苦八苦した。 そこで、さらに本編で「分析と解説」を加えることにした。 ロシア・ウクライナの過去32年の歴史を調べていくうちに、いくつかの「パターン」が繰り返されていると私は考えるようになった。そのうち、特徴的な次の3点を抽出してみた。 (1)「経済」「政治」「国際関係」3つの負のループに2国間関係がはまり込み、抜け出せなくなった。 (2)

ウクライナ戦争を理解する歴史知識6  ロシア産天然ガスのくびきから解放され ウクライナは脱露から反露へ転換    露も報復に転じ武力衝突へエスカレート       終わりなき泥沼の離婚劇         ウクライナ戦争に関する私見 後編・各論 2023年1月25日現在

今回は1991年、ソ連が解体しウクライナが独立した後、現在に至るまで32年間の歴史を時系列でたどってみる。350年の悲願である主権国家を持ったウクライナにとって、独立は夢と希望に満ちた出発だった。それが32年間で「旧社会主義国でいちばん貧乏な国」に転落した。一体何があったのか。 (注)本文中では、2014年に始まるロシアのクリミア半島併合と東部2州への軍事介入を「第一次ウクライナ戦争」、2022年に始まる軍事侵攻を「第二次ウクライナ戦争」と記す。2014年にはすでにロシアの

ウクライナ戦争を理解する歴史知識2  第一次大戦で近隣強国すべて瓦解      ウクライナ初の独立国家樹立するも         ボルシェビキ・ポーランド・ドイツに潰され              ソ連統治下で死者500万人の大飢饉  ウクライナ戦争に関する私見15   2022年8月4日現在

第二回目の本稿は、20世紀に入ってからのウクライナの歴史を述べる。 まずは20世紀前半、第一次世界大戦とロシア革命から。 20世紀になってからのウクライナ史はテンポが早くなり、そして陰惨な出来事が連続で起きる。血なまぐさい。第一次世界大戦が始まった1914年から、第二次世界大戦が終わる1945年の31年間のウクライナは、数百万単位で人が死ぬ戦争、殺戮、破壊、飢餓の連続である。悲惨としか言いようがない。 (冒頭写真はロシア10月革命100周年を祝うモスクワの集会。2017

ロシアが考える「勢力圏」はどこまでなのか 旧ソ連構成国は主権国家とみなさず   繰り返される軍事介入        独特の「主権国家」観は欧米とは異文化     ウクライナ戦争に関する私見12    2022年6月11日現在

「ロシアがウクライナに侵攻した。きっとすぐに隣国のフィンランドや日本に攻め込んでくるに違いない」。そんな恐怖が日本や国際世論に流れている。今回の論考は、その可能性を検討してみる。 2022年2月24日にロシアが隣国ウクライナに軍事侵攻したとき、国際社会の反応は「驚愕」を通り越して「パニック」に近いものだった。その反応のひとつが「ウクライナに攻め込むなら、わが国にもロシアは攻め込んでくるのではないか」である。  特にロシアと国境を接する国は、ウクライナの連想で我が身を案じず

スマホ+SNS時代の戦争ニュースを      理解するためのメディアリテラシー          国際世論を戦場に          「ハイブリッド・ウオー」が進んでいる      ウクライナ戦争に関する私見4       2022年3月23日

<前置き1>今回も戦争という緊急事態であることと、公共性が高い内容なので、無料で公開することにした。 <前置き2>今回もこれまでと同様に「だからといって、ロシアのウクライナへの軍事侵攻を正当化する理由にはまったくならないが」という前提で書く。こんなことは特記するのもバカバカしいほど当たり前のことなのだが、現実にそういうバカな誤解がTwitter上に出てきたので、あらかじめ封じるために断っておく。 1963年生まれの私は、ソ連が崩壊したとき28歳だった。その時はすでに記者と

キエフ市街戦の犠牲者は数万人?       回避にはゼレンスキー撤退しかない      欧米は亡命を計画      ウクライナ戦争・私見メモ3        2022年3月9日現在      

巻頭写真: "Motherland" is a monumental sculpture in Kiev on the right bank of the Dnieper. Located on the territory of the Museum of the History of Ukraine in World War II. Photo: Aleksandr Mokshyn, October 18, 2021 ●ロシア軍に銃撃された英取材チーム ウクライナ戦争の取

ロシア軍は得意の「恐怖戦略」を実行     抵抗すればするほど殺戮されるウクライナゼレンスキーを国民はどこまで信頼する?2022年3月6日時点         ウクライナ戦争に関する私見メモ2

巻頭写真:"Ukrainian flag in the city of Kharkov." January 24, 2022, iStock. ●正規軍によるテロリズム ロシア軍はウクライナで「抵抗すればするほど国は破壊され、より多くの市民が死ぬ」という「恐怖戦略」を採用していると思う。相手に恐怖を与え「早く抵抗をやめた方が被害が少なくて済むよ」と誘う。 これは2回のチェチェン戦争(第一次:1994〜96年 第二次:1999〜2009年)でロシアがチェチェン人の抵抗を屈服