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夜の魔神 

宵闇 葉桜 薄明かり

囀る 鶯 漆黒の
海に 沈んだ 歌姫と

抗う 波間の 最果てに
浮かぶ 小舟と 朧月


波のまにまに さざめく 灯り

お前の涙と ちぎれた想い
花びらほどに 浮かんで 消える

もう泣かないで 涙を お拭き
お前の 好きな あの人は

歌に誘われ やって来る

あの人は 

あの人は


お前の好きな
あの人は

夜の支配者
魔神なる

姿なき 魔神とて 逢瀬の 運命(さだめ)の
あの人は

この世のものでは あるまいに

幼心のお前には

なされぬ 恋の 悲しさに
儚い 想いの 苦しさに

身投げる 海に こだまする 
誘う命の  在りし日は
おぼつかぬほど 海のほど
この深海の 不思議ほど 
永遠(とわ)に 目覚めのない世界


これが人魚の始まりで
魔神に 捧げた けなげな 姫のお話し


海色 藍色
緋(あか)の糸



彼女の声が
こだまする
どれほど時が 巡っても

波は 流れを 止まない 絶やさない


漁火 蛍火 かがり火よ
砂浜 海風 髪飾り

悲しみ こらえる 星の空
葬る声の こだまする

魔神を 愛する 歌姫の
尽きぬ歌声 茜雲 

空を焼き たそがれて

嗚呼 黄昏れて



無垢な人の魂は 

最期が海に 回帰する

誰も知らない 終りには



夜を

魔神は 飲み尽くす





海は 泣く

孤独は 海に やって来て

闇の 向こうの静寂に 
沈んで 初めて 眠るまで



儚くもあり 恋しくもある
終わらない 幻想物語り


いえ 本当は
終わりたくない 物語り



夜の魔神の物語
姫と魔王の 物語



恋しくて 恋しくて



2024/03/12 teo












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