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一年越し北の地、消滅する町

11月19日
寒さが堪える。新青森駅、たった今着いた新幹線の乗客たちが、縮こまって乗り換え電車を待っている。11月中旬、まだ雪は降らない。私も彼らと同様、重いリュックを背負って待合室に座り、一向にやって来ない電車を退屈な気持ちで待っていた。向かい側の席に2人組のサラリーマンが座っていて、2人とも関西弁で喋っている。2人の会話から聞き取れた単語を抜き出すと『新青森駅・アウトレット・函館』。こんなお題の三題噺が出題されたらどんなふうに書けるかしら…と考えて、「出張」しか連想できないので、考えなかったことにする。
電車が来た。最寄り駅で降りて、家まで歩く。1年ぶり(正確にはもう2ヶ月)の地元、全くもって変わらない景色が怖いと思った。


11月20日
課題に追われている。


11月21日
免許センターに行って2時間の講習を受ける。東映制作の飲酒運転防止ビデオ、主役の俳優の演技が光る。突き詰めたつまらなさ。一杯のビールで死亡事故を起こし、一家離散、天涯孤独に。俺だったら発狂するだろうが、主人公は健気にも自我を保ち続け、「償い」と称して被害者遺族の元へ謝罪文を書き続ける。(その間、家を無くし、身重の妻が母子共に死亡、長男が施設送りになっている)こういうのの元ネタってなんの映画なんだろうか。その後、そうした「償い」が全く受け入れられなかったことを知った彼は、今度こそ絶望、発狂したのであった....30分そこそこの長さだが、あらゆる場面に対して『そこに白塗りの老婆が...』という展開を妄想をしながら観ているとあっという間だった。
家族で寿司屋に行く。遠慮しつつ本マグロ五点盛などを頼む。
夜は唐揚げだの牛タンだのポテトだの、正月か誕生日みたいな食卓になる。「いつもロクなもん食ってないだろうから」が理由らしい。親の優しさを申し訳なく思うようになってしまった 。
追われていた課題を終わらせた。
父親と『ほえる犬は噛まない』を観る。父親と映画を見てきた中で一番穏やかな気持ちで観れた気がした。

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