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1月31日 春風亭一之輔独演会

 10時半に家を出て12時前に御徒町、吉野家を5分で食べて鈴本演芸場。既に50人くらいの待機列ができていて、自分が並んだあとに倍の長さになった。流石にまずいと思ったのか30分前倒しで開場、前三列目のど真ん中に座れた。やったぜ。

 あっという間に客席は埋まった。だいぶ遅れて隣の席に座ったご年配がダジャレ多めに話しかけてきて、アハハと相槌を打つ。「会話はお控えください」何回聞かされ読まされてきたんだろう、この言葉。まぁいいか。鈴本の椅子は狭い。隣の座席も肘掛けも使えないのでダウンを着たまま見ることにする。けっきょく最後まで脱がずに済んだ。

 前座は春風亭いっ休さん。頭の形が良い、肌が白い、手が細くて綺麗で声もすっと通る。達磨みたいな師匠とは似ても似つかない。女郎屋のしわくちゃの女将さんが良かったなぁ。

 主役登場。禿げの真ん中だけ剃り残しみたいに残っている毛が気になる。マクラが圧倒的。落語なんていいからずっとマクラだけ聞いていたい。「プリプリプリッ」と出てくるレシートに感動する。時計は大事という話から一席目の「鈴ヶ森」が始まった。

 出会った頃から一之輔の鈴ヶ森が大好きだ。この人にしか出せないハイテンポ、ハイテンション。座布団の上に男が2人いる。口移しが出来ずに舌打ちしたり、手を繋いで腕を絡ませたり、たけのこが入っちゃったり―――。こんな風なエロくてバカバカしいテンション高めのエロギャクBL漫画が無いかな、なんてことを考える。無いなら存在する世界になって欲しい。親分と子分の関係性が可愛かった。

 2席目は「ガマの油」。1年前の二人会でも見たのを思い出す。乗っけから口上が美しい。「酔っぱらいながら仕事はしちゃいけない」話から、一之輔自身が酔って口座に上がったエピソードに持っていき、その後ガマの油売りと一之輔がダブる。高座の枠を飛び越えて近代と現代、フィクションとリアルが融合する。一之輔の落語はイリュージョン砲やデタラメ機銃を搭載した改造マシンのようだ。いかがわしいのに精巧。流血からの失神オチ、デスマッチみたい(デスマッチを見たことはないけど)だった。

 仲入り後はコラアゲンはいごうまん。コラアゲンさん初鈴本おめでとう。緊張しているのがビンビン伝わった。20分くらい(感覚)の新興宗教モノ。儀式のシーンから時間が飛んでしまったのでいつか完全版を聞きたいと思った。自転車屋さんの細かい描写も知りたい。コラアゲンさんは声がデカい。一之輔もデカい。デカいはパワー。問答無用の面白さ。

 一之輔の3席目「淀五郎」。仮名手本忠臣蔵の塩治判官に抜擢された若い歌舞伎役者の話。去年から何度か歌舞伎を見に行っていたから花道や役者の立ち位置が目に浮かぶ。色んなものが見方を広げるんだと実感(←凡百な表現)。主人公と一緒になって「型無し」とは何か考えながら噺に没入する。誰かを真似て自己解釈するまでの困難。何だってそうかもしれないが、舞台の上の規範は現実にも当てはまる。顔の動きが良く見えて、前三列目ど真ん中の幸運を繰り返し噛み締めた。

今年の1月にこんなの書いてたんだけど勢いが好き


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