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資産除去債務(前編)企業が求められている環境債務が分かる


1.資産除去債務:固定資産の処分・除却に関する費用

のれんを含む減損の話は、かなりダイナミックな話ですが、地味ですが、大事なお話にも触れたいと思います。

資産除去債務、です。

資産除去債務とは何ぞや?

いわゆる固定資産の取得、建設、開発、使用によって生じうる、将来発生する可能性のある除去(資産を取り除く際に発生する)に関連する将来債務のことです。

私はこう見てても負債の研究家!です。

保険負債、退職給付債務・・・これまで研究してきた成果は負債に関連するものが多いです。

なぜ負債の研究を!という話なのですが、将来の債務を見積もことに関連するものに面白さを感じたからです。

また負債の時価評価は、資産の時価評価と比べてまだまだ検討する余地が残されている、と思ったこともあります。

さて、資産除去債務をもう少し具体的にいうと何があるのでしょうか?


「資産除去債務」とは、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって生じ、当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいう。この場合の法律上の義務及びそれに準ずるものには、有形固定資産を除去する義務のほか、有形固定資産の除去そのものは義務でなくとも、有形固定資産を除去する際に当該有形固定資産に使用されている有害物質等を法律等の要求による特別の方法で除去するという義務も含まれる。(会計基準3.(1))

除去とは何でしょうか?

有形固定資産を用役提供から除外することをいう(一時的に除外する場合を除く。)。除去の具体的な態様としては、売却、廃棄、リサイクルその他の方法による処分等が含まれるが、転用や用途変更は含まれない。また、当該有形固定資産が遊休状態になる場合は除去に該当しない。


簡単にいえば、資産を使った後の除去の際のことも考えてね!という話になります。

これもう皆さんにとって身近な事例としてありますよね。

そうです。

家電リサイクル法、です。

家電リサイクル法とは
一般家庭や事務所から排出された家電製品(エアコン、テレビ(ブラウン管、液晶・プラズマ)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)から、有用な部分や材料をリサイクルし、廃棄物を減量するとともに、資源の有効利用を推進するための法律です。

処分に関する費用を前払いで払ったと思います。原理的にはこれと同じ、ですね(キャッシュ・アウトしているわけではないですが)。

法令等によって、資産の処分に費用が発生する場合があり、それに関連する費用をあらかじめ負債として計上する、というのがわかりやすくいえば、資産除去債務のコンセプトです。

2.資産除去債務の認識要件

資産除去債務を認識しなければならない時は具体的にどういった場合でしょうか?もう少し具体的に見ていきましょう。

資産除去債務においては主に法令で定めらているかどうか(IFRSはそうでもないようですが、実務上では違いがないかもしれません)が認識のカギを握ります。では法令上で定められていることといえば、どんなものがあるでしょうか?

資産除去債務の対象となる環境債務として、土壌調査費、PCB処理費、運搬費、アスベスト調査費、処理費があります。これらの費用は、土壌汚染対策法、PCB特措法、石綿障害予防規則等環境法令で定められている項目になります。


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こちらは有形固定資産シリーズ(6)_資産除去債務①からの引用です。
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/get-connected/pub/atc/201702/jp-atc-kaikeijyoho-201702-02.pdf

法令が変われば求められる義務・債務が変わってきますね。

土壌汚染といえば、思い出されるのは、豊洲市場の問題ですね。こちらは官の問題でしたが、それが環境汚染の問題がこれほど取り上げられたことは原発の事故を除けばそうないと思います。


あとはアスベスト被害の問題ですね。

アスベスト解体費用の目安
一般的に、アスベスト解体費用は、吹き付けアスベスト(レベル1)がある場合、解体費用のおおむね2倍になります。 解体費用が150万円なら、アスベスト除去費用も150万円ほどかかり、アスベスト解体費用は300万円くらいになるということです。

かなりお金かかりそう・・・。

なお、IFRSではいわゆる法的な債務だけではなく、推定的な債務、いわゆる実務上の慣行により生じる義務で発生しうる場合でも認識しなければならない、とされています。

が、おそらくですが、日本基準でもIFRSでも大きな違いは生じないと考えられます。現在では企業は法令に基づいて資産の除去について責任を持った対応をすることが義務付けられていますので、計上しなければならないケースにIFRSと日本基準で相違は生じないのではないかと思います。

3.案外、真面目に計上されている?

資産除去債務の認識が求められる具体的なイメージは分かったとして、じゃ、会計処理できるの?に疑問が行くと思います。

まず、建物を建てたとして、解体するのは30年後・・・そのための債務なんてわかんない!ということになろうかと思います。分からないものは分からないのですが、限られた情報でも見積もりましょう、となります。

「合理的に見積もることができるか」が重要な判断の分かれ目になります。

合理的に見積もれない場合はどうするのか?といえば、計上しなくてよいことになっています。

資産除去債務の発生時に、当該債務の金額を合理的に見積ることができない場合には、これを計上せず、当該債務額を合理的に見積ることができるようになった時点で負債として計上する(同基準第5項)。

将来発生することが明確な費用(除去費用)を、事前に負債という形で明らかにして、財務状況に反映させることになります。環境債務として資産除去債務に計上しなければならないのは、環境法令で規定されるものの他に契約で規定されている場合も含みます。

この基準ではどの企業も真面目に計上しないんじゃないと…思われそうですが・・・。


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真面目に計上していることがうかがえます。実務上、判断が出来ないようなものであっても、公認会計士の監査を通じて、資産除去債務への対応が求められたり、同業他社が計上しているのをみて、計上したり、ということがありそうです。

*後半に続きます。




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