【六枚落ちマニュアル】第2部第1章第15節 スズメ刺し定跡、ステップ4-6

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◆本節では、スズメ刺し定跡、ステップ4-6を解説します。これでついにステップ4が完了します。

長かったステップ4も今回がラストです。
今回は下手が▲2一馬と指した局面から解説します。
ここで上手の受け方が3つありますので、順に解説します。
1)△5二玉
2)△5三玉
3)△3二香(本手順)
 
まずは1)△5二玉(参考152図)から。

ちなみに、ここで▲4二竜!△同玉▲4三金打△5一玉▲5二金打の詰みもあります。ちょっと難しい詰みなので、参考までに。

この△5二玉はあまり良い手ではないのですが、この局面での好手を皆さんに知ってほしいので解説します。ここで▲4三金!(参考153図)が好手です。

この▲4三金は△4二金が動けないことを利用した「金縛り」の攻め方です。しかも竜と馬の利きを合わせて「一間竜」にも似た攻め方です。上手が△同金とも△同玉とも取れないことを確認してください。よって上手は△6二玉(参考154図)と逃げます。

下手は浮いた金を▲4二竜(参考154図)と取ることができます。

こうして要の守り駒である金をただ取りできたので下手成功です。
 
では、戻って2)△5三玉(参考156図)を考えます。

ここでも下手の好手があります。▲5四金(参考157図)が玉を上から抑える好手です。

上手は△5二玉(参考157図)と逃げます。

この局面は下手のチャンスです。いくつかの良い手があります。ここで▲4三金と指せば、先ほど解説した参考153図と同じ局面になり、下手成功です。また、▲5五金で銀を取るのももちろん良い手です。その上で、ここでは▲4三馬(参考159図)が推奨です。

 ※参考158図では、実は▲4二竜!からの詰みがあります。詰ますのが得意な方は▲4二竜の先を読んでみてください(本文末に正解手順を書きます)

この▲4三馬も一間竜に近い攻め方になります。上手は△同金とも△同玉とも取れず、△6二玉(参考160図)と逃げます。

下手はもちろん▲4二竜(参考161図)と金をただ取りします。

これも下手成功です。
 
では本手順である3)△3二香(155図)の解説に進みます。

上手としてはこれがベストの受け方です。王手を受けつつ、同時に竜の利きを止めることができました。155図で▲3二同馬と取っても△同金で失敗です。
しかし、下手はあきらめずに3二のマスを狙います。現状で3二のマスは「攻め駒2枚対守り駒2枚」です。△3二香は3二にいるのですが、3二を守っているわけではないのでカウントしません。
そこで下手は▲2三金(156図)と攻めます。

この▲2三金は3二のマスを攻める駒を増やした手であり、通称「足し算」です。これで3二のマスが「攻め駒3枚対守り駒2枚」になりました。上手はもう3二のマスを守り切ることができないので△5三玉(157図)と逃げます。

このように、上手はあるマスを守り切れないと分かった時に、そのマスの戦いを諦めて玉を逃がすことはよくあります。
下手は構わず▲3二金(158図)と香を取ります。

ここも、上手は△同金と取っても3二のマスの戦いに勝てないので△5二金(159図)と逃げます。

下手好調です。
こうした局面で、多くの方は▲3一馬と攻めます。もちろんそれも自然な攻めですが、ここは▲3三金(160図)が推奨の一手です。

▲3二金を移動させたことで、竜の利きと馬の利き、両方が通って攻めやすくなりました。上手は△9九銀成(161図)と攻めます。

この△9九銀成は香のただ取りですので、確かな戦果があります。ちなみに△9九銀成に代えて△9九銀不成とあえて成らずに指す手もあります。これなら次に△8八銀成という活用が可能です。
ただし、どちらにしても上手の攻めはそれほど厳しくないので、下手は攻めに専念します。▲5四香(162図)が厳しい手です。

この▲5四香は玉と金を突き刺すように狙っています。通称「田楽刺し」です。
上手は玉を逃げるよりなく、△6四玉(163図)と逃げます。

下手は▲5二香成(164図)で金を取ります。香の利きを生かした攻め方です。

上手は戦力不足で受けが難しく、△4五香(165図)と攻めます。

この△4五香は次に△4七香成を狙っています。
まだまだ下手玉の周りには金銀が守っており、△4七香成と指されてもそれほどいやではないです。しかし確実に受けたい方でしたら▲3八銀や▲4八銀なども良いでしょう。
本マニュアルは、ここで▲3一馬(166図)と攻める手を推奨します。
 
※▲3一馬に代えて▲6五金の王手銀取りも好手です。

上手は玉を逃げるしかありません。遠くに逃げる△7三玉を本手順としますが、先に△6五玉(参考162図)と逃げる手を解説します。

このように玉を上の方に逃げられた時、どうすればよいのか分からなくなる方は多いようです。
この場合、上手玉の上には下手の歩や桂、銀が控えており、下の方には馬や成香などが控えていますから、「上下で挟み撃ち」の形になっています。参考162図では▲7七桂!(参考163図)が好手です。

これで上手玉が逃げるマスは意外と少ないのです。ここで△5四玉には▲5三馬などで詰みですから、△7六玉(参考164図)とさらに上に逃げます。

ここまで上手玉に逃げられても、周囲に下手の駒がたくさんあり、上手玉の逃げられるマスがなくなりました。ここで▲8六馬(参考165図)で詰みとなります。

なお、最終手の▲8六馬に代えて▲8六金と打っても詰みですが、もし勘違いで詰まなかった時に持ち駒を温存していた方が良いので、▲8六馬で詰ますことを推奨します。
では166図に戻ります。

それでは、△6五玉に代えて、本手順である遠くに逃げる△7三玉(167図)を解説します。

下手は攻めを続けます。ここは▲6二成香(168図)とじっと活用するのが良いです。

この▲6二成香は、地味ながら上手玉に一歩迫る価値の高い手です。上手は適当な受けもないので△4七香成(169図)と攻めます。

まだ上手玉の囲いが健在な状態で、この△4七香成と下手玉の近くに成香を作られたらいやですが、この局面は終盤戦であり、下手の攻めの方が速いので大丈夫です。
将棋の終盤は、「どちらが先に相手玉を詰ますか」を競います。そのため、多少自玉の守りが崩されていても、それ以上に相手玉の守りを崩していれば、こちらの攻めの方が速いので問題ないのです。と、言葉で分かったとしても実際に相手に攻められたら怖いという気持ちはあると思いますので、徐々にそうした感覚を身につけてもらえたらと思います。
下手は▲8五金(170図)と打ちます。

この▲8五金は上手玉が△8四玉と逃げられないようにする「退路封鎖」です。そして次の下手の手番で▲7二成香とすれば上手玉を詰ますことができますから、▲8五金は「詰めろ」でもあります。
上手は△8四歩(171図)と突きます。

この△8四歩は受けの好手です。8三のマスを空け、玉の逃げ道を作るとともに金取りにもなっています。
しかしここは下手にとってチャンスです。金を逃げずに▲7二成香(172図)と攻めます。

上手は△8三玉(173図)と逃げる一手です。

さて、ここで3手前に打った▲8五金の効果が分かります。▲8五金は8四のマスをふさいだだけでなく、この局面で9四の逃げ道をふさぐ役目もしていたのです!
下手は▲8二成香(174図)と寄ります。

上手は△7三玉(175図)と逃げるよりありません。

さあ、ここで▲7二竜!(176図)が決め手で上手玉が詰みです。

以上、てごわい△3二玉型を見事に攻略することができました!
お疲れさまでした。

 これでステップ4が完了、そして第2部第1章スズメ刺し定跡も完了となります。
 次回は「第1章スズメ刺し定跡を書き終えた感想およびアンケートのお願い」です。 

(参考158図の詰み手順の解説)

参考158図以下、▲4二竜!△同玉▲4三馬△5一玉▲5二金までの詰みです。最初の▲4二竜が駒損ながら守りの金を入手する好手で、最後にその金を使って頭金までの詰みとなります。(令和6年2月23日追記)

なお、参考152図でも、解説した▲4三金に代えて、▲4二竜!△同玉▲4三金打△5一玉▲5二金打までの詰みがあります。(令和6年2月24日追記)

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