【六枚落ちマニュアル】第2部第2章第3節 9筋攻め定跡 ステップ1-1

◆本節では、9筋攻め定跡ステップ1―1を解説します。(ステップ1は2つに分けます)

では、ステップ1解説スタートです。
今、上手が△7三金と上がった局面です。ここで下手は▲9四歩(11図)とすぐに攻めるのが9筋攻めの定跡です。

          

こうして、最初は飛車が攻めに参加せず、角+香+歩で9筋を攻めます。

ここで第1章のスズメ刺しを読んでくれた方の中には「すぐに攻めずに▲9七香から▲9八飛と飛車を9筋に構えてから攻めた方が良いのでは?」と思う方がいらっしゃるかもしれません。実際に指導対局でそのように指される方もいます。
しかし、結論から言えばその指し方はうまくいきません。本手順を進める前に、▲9四歩に代えて▲9七香(参考8図)から攻めの形を作る順がなぜうまくいかないのかを解説します。

この▲9七香は、スズメ刺しと同様に▲9八飛の形を作るための手です。
上手は△8四歩(参考9図)と突きます。

この△8四歩で上手は下手の角の利きを止めることができました。下手は予定通り▲9八飛(参考10図)と回ります。

これでスズメ刺しと同じく、飛+香+歩の強力な攻撃陣が完成しました。
しかし上手も△8三金(参考11図)と守りを固めます。

この上手の守りの形、スズメ刺しの章を読んでくれた方ならピンとくるかもしれません。そうです、第1章第2節で解説した参考1図と似ているのです!

第2部第1章第2節 スズメ刺し基本図までの手順で解説した参考1図です

スズメ刺しの章では説明を省きましたが、今回は参考11図がなぜ攻めにくいのか、詳しく解説します。
では再び参考11図です。

ここで▲9四歩(参考12図)と攻めてみます。

飛+香+歩で、まずは9四のマスの戦いになります。9四のマスは、
攻め駒 飛+香+歩(3枚)
守り駒 金+歩(2枚)

ですから、攻めが成功します。上手は△同歩(参考13図)と取ります。

下手は▲同香(参考14図)と取ります。

これで下手は9四のマスの戦いに勝つことができました。しかし、ここからが大変です。次は9三のマスの戦いになります。現在9三のマスは、
攻め駒 飛+香(2枚)
守り駒 金+銀(2枚)

です。2対2なので攻めは成功しません。ここで上手は△9三歩(参考15図)と打ちます。

下手は▲同香成(参考16図)と取るよりありません。

上手は△同銀(参考17図)と取ります。

一応最後まで、▲同飛成(参考18図)と取ってみます。

上手は△同金(参考19図)と取ります。

これで、下手の攻めが失敗したことが明らかになりました。上手の守りが堅かったですね!
失敗した理由を確認するために、もう一度参考11図に戻りましょう。

つまり、下手が▲9七香+▲9八飛と良い攻めの形を作っている間に、上手も△8二銀+△8三金の良い受けの形を作ることができるのです! このあたりが将棋の面白いところです。
よって、今回の9筋攻めの場合は、「上手が良い受けの形を作る前にまず攻める。そのあとに飛車を回って攻める」という方針が良いのです。
 
では、本手順の11図に戻ります。

さきほど解説した理由により、下手は「△8三金型」を作られる前に▲9四歩と攻めるのが大事です。上手は△同歩(12図)と取ります。

下手はもちろん▲同香(13図)と取り返します。

これで下手は9四のマスの戦いに勝つことができました。
そしてここが上手にとって分岐点になります。
13図では上手に二つの手があります。△9三歩(14図)と△8四金です。

この△9三歩は、下手の攻めをなんとか食い止めようという手です。
そしてもう一つ、△8四金(15図)という手があります。

この△8四金は香の侵入を防ぐことを諦め、角の利きを止めるとともに、のちの「飛車の9筋突破」に備える手です。この△8四金が有名な定跡の一手であり、ステップ2およびステップ3で解説します。では14図に戻ります。

この△9三歩は、次の手番で△9四歩と香を取る狙いです。
 
以上、ステップ1―1を解説しました。
次回は「9筋攻め定跡 ステップ1-2」を解説します。


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