【六枚落ちマニュアル】第2部第1章第9節 スズメ刺し定跡 ステップ3-4

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◆本節では、ステップ3―4を解説します。これでステップ3が完了します。

さて、94図から解説します。今、上手が△5三金直と金を逃げた局面です。このように、玉や金などがするすると上に逃げだした時、どうやって攻めたらよいのか分からなくなる方も多いと思います。本節の解説がそうした方にも参考になれば幸いです。
 
94図では、△5三金に狙いをつけます。成香とと金で協力して攻められるマスは「4三」です。しかし現在は「攻め駒2枚対守り駒2枚」です。同じ数なら数の攻めは失敗しますが、今回の場合はなんと▲4三成香(95図)と攻める手が成立します。

あらためて、4三のマスは「2対2」です。これがなぜ成功するのか、95図をよく見れば答えが分かるかもしれません。
本手順はここで△6一金と引くのですが、その前に△同金(参考52図)と取ったらどうなるかを確認します。

下手はもちろん▲同と(参考53図)と取ります。

上手はもちろん△同玉(参考54図)と取ります。

4三のマスの戦いは「成香+と金」で「金1枚」を取っただけなので失敗ですが、そうです、この局面では▲6二竜(参考55図)と取ることができるのです!

これで金2枚を取れたので下手成功です。
なおこの手順は、△6二金が浮き駒になり、ただで取れるから成立する手順です。少し形が違えば成功しないので、そこは気をつけてください。
 
では95図に戻ります。

ここで△同金と取る手を解説しましたので、本手順の△6一金(96図)を解説します。

この△6一金は狙われている金を逃げた手です。
しかし、下手の手番になったので下手はもちろん▲5三成香(97図)と取ります。

ちなみに、この▲5三成香に代えて▲4四成香で、銀を取る手もありました。どちらも良い手ですが、基本的に金の方が銀よりも価値が高く、迷った場合は金を取った方がよいです。
 
上手は△同銀(98図)と取ります。

下手は「成香と金の交換」に成功しました。
次はどこを攻めるか。この場合は「玉のそばの△5三銀」を目標にするのが良いでしょう。ただし98図ですぐに▲4三と? は△同玉で失敗です。そこで▲3二竜(99図)が好手です。

この▲3二竜は、4三のマスに利かし、次に▲4三と、と攻める準備です。
上手は△8四香(100図)と反撃します。

この△8四香は8七のマスを狙っています。
現在8七のマスは、
下手の守り駒 金1枚
上手の攻め駒 銀+香

ですから、次に△8七香成とされると8七のマスを突破されてしまいます。
本マニュアルでは受けずに攻めて勝つ▲4三とを本手順として解説しますが、もし受けるのであれば▲9八金(参考56図)という受け方もあります。

この▲9八金は8七のマスを「2対2」にする受け方です。ただし、この▲9八金は8七のマスを受けるためだけの手ですので、効率はよくありません。また、持ち駒の金を使うことで攻撃力が下がります。よって本マニュアルでは受けずに攻める手を推奨します。
100図に戻ります。 

では、受けずに攻める▲4三と(101図)でいきましょう。 

上手が8七のマスを狙うなら、下手は△5三銀を狙います。
上手は△8七香成(102図)と攻めます。

下手が5三を攻め、上手が8七を攻めている状況です。下手は△5三銀と△8七成香、どちらを取ることもできます。この場合は▲5三と(103図)で先に銀を取るのが良いでしょう。

この▲5三とは王手ですから、上手は攻める暇がありません。このように、王手で先に取れる駒がある場合は取った方が良いです。(これから上達すると違うケースも出てくるのですが、まずはこう覚えていただいて良いと思います)
上手は△同玉(104図)と取ります。

上手の銀を取り、上手玉を攻めやすくなりました。ここでは▲5五角と出る手も良い手です。本マニュアルでは▲8七金(105図)といったん成香を取る手を本手順とします。

上手はもちろん△同銀成(106図)と取ります。

下手は8七のマスを攻められ、金を1枚取られてしまいました。しかしその前に下手が大きく得をしているので大丈夫です。ここで狙われている角を逃げながら攻めに使う▲5五角(107図)が好手です。

 もともと、上手は△5五歩で角筋を止めていました。しかし下手が上手の金銀をはがすことでこの△5五歩を守る駒がなくなり、▲5五角が実現しました。
107図では、次の下手の手番で▲4四金と打てば上手玉を詰ますことができます。そこで上手は△5二歩(108図)と受けます。

この△5二歩は竜の横利きを止め、▲4四金と打たれても△6二玉と逃げる手を可能にする受けです。ここで下手はいろいろな攻め方があります。本マニュアルでは上手玉の逃げ道をふさぐ▲7三角成(109図)を推奨します。
 

これで、下手は竜と馬で上手玉を挟み撃ちにしています。上手は△2六歩(110図)と攻めます。

この△2六歩は次に△2七歩成でと金を作る狙いです。ここも受けるなら▲3八銀や▲3八金などがあります。しかし上手玉に詰みがあるので攻めます。▲3三竜(111図)が好手です。

上手は困りました。竜の利きを防ぐか、逃げるなら△5四玉です。△5四玉はあとで解説しますので、まずは△4三金(112図)と受けます。

この△4三金は竜の利きを止めると同時に竜取りを狙った受けです。
こうして竜取りの手を指されると反射的に竜を逃げる方もいらっしゃると思います。もちろん竜を取られない方が良いのですが、ここはチャンスです。竜を逃げずに▲4四金(113図)が好手です。

ステップ1でも登場した「一間竜」の手筋です。
上手は△同玉とも△同金とも取れず、これで詰みとなります。
 
最後に、111図に戻り、他の応手でも詰むことを確認しましょう。

▲3三竜と引いた局面で、△4三金は▲4四金の一間竜で詰みでした。では△4三金に代えて△5四玉(参考57図)と逃げたらどうするか。

これもいろいろな詰まし方があります。基本はやはり▲5五金(参考58図)の頭金でしょう。

これでステップ3が完了です。途中変化手順の解説が多くなりました。
 
次回から、スズメ刺し定跡の中でもっともてごわい「ステップ4 △3二玉形」の解説に入ります。
次回は「スズメ刺し定跡 ステップ4―1」の解説です。

なお、このステップ4は上手陣を破る際の難易度がかなり上がります。それに加え、ある局面でこれまで気づかなかった上手の受けの好手を発見してしまいました…。まだまだ検討を重ねたほうがよいのですが、現時点で私が分かっていることを一通り書きます。 


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